第193回通常国会で所得税法等の一部改正法が成立しました。本改正では、わが国の成長力の底上げのため個人所得課税改革、企業の「攻めの投資」や賃上げの促進など経済の好循環の強化、酒税改革などに取り組むとし、また、日本企業の健全な海外展開を支えつつ、国際的な租税回避に効果的に対応できるよう、国際課税の見直し等も行われます。 ■所得税法等の一部改正法の概要 1.個人所得課税 ◎配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し ・所得控除額38万円の対象となる配偶者の収入の上限を103万円から150万円に引上げ ・納税者本人に所得制限を設定。給与収入1,120万円から逓減、1,220万円で消失 ◎積立NISAの創設 ・積立・分散投資に適した一定の投資信託に対して定期かつ継続的な方法で投資を行う「積立NISA」を創設(年間投資上限額40 万円、非課税期間20 年。現行のNISAとは選択適用) 2.資産課税 ・事業承継税制の見直し(災害時等における雇用確保要件の緩和、相続時精算課税制度の併用) ・国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し ・住所が一時的である外国人同士の相続等は国外財産を相続税等の課税対象から除外 ・国外に居住する日本人の納税義務を拡大し、租税回避を抑制 課税対象となる国外居住期間:5年以内⇒10年以内 3.法人課税 ◎競争力強化のための研究開発税制の見直し ・総額型を試験研究費の増加率に応じて税額控除できる仕組みに見直し、試験研究費の水準に応じて8~10%(中小法人:12%)⇒試験研究費の増減割合に応じて6~14%(中小法人:12~17%) ・試験研究費の範囲に新たなサービス開発に係る一定の費用を追加 ◎賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し ・大企業については、2%以上の賃上げを行う企業に支援を重点化した上で、前年度からの給与支給総額の増加額への支援を拡充(現行制度とあわせて12%) ・中小企業については現行制度を維持しつつ、2%以上の賃上げを行う企業については、前年度からの給与支給総額の増加額への支援を大幅に拡充(現行制度とあわせて22%) ※所得拡大促進税制:給与支給総額の24年度からの増加額の10%を税額控除できる制度 ◎地域中核企業向け設備投資促進税制の創設 地域の中核企業が、地域経済に波及効果のある高い先進性を有する事業(※)を行う場合に、その設備投資を対象に投資促進税制を創設 ※都道府県の認定を受け、国の確認を受けたもの ◎中小企業向け設備投資促進税制の拡充 中小サービス事業者が行う設備投資(冷蔵陳列棚、空調設備等)のうち、生産性向上に資するものについて、即時償却又は10%(※)税額控除の対象に追加 ※資本金3,000万円超の場合は7% 4.消費課税 ◎酒税改革 類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料や醸造酒類の税率格差の解消、ビールの定義拡大など、酒税改革に取り組む ア.税率構造の見直し ・ビール系飲料の税率について、平成38年10月に、1kl当たり155,000円(350ml換算54.25円)に一本化(3段階で実施) ・醸造酒類(清酒、果実酒等)の税率について、平成35年10月に、1kl当たり100,000円に一本化(2段階で実施) ・その他の発泡性酒類(チューハイ等)の税率について、平成38年10月に、1kl当たり100,000円(350ml換算35円)に引上げ イ.ビールの定義の拡大 地域の特産品を用いた地ビール開発を後押しする観点や外国産ビールの実態を踏まえ、麦芽比率要件の緩和(67%→50%)や、副原料の拡大(果実や一定の香味料を追加)を行う ◎エコカー減税 燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、エコカー減税の対象範囲を見直し ※段階的な基準引上げ。ガソリン車への配慮措置(減税対象:9割→8割)。また、2回目免税の対象を重点化(免税対象:4割→3割、2回目免税2割) 5.国際課税 「外国子会社合算税制」について、租税回避リスクを外国子会社の外形(税負担率)ではなく、個々の活動内容(所得の種類等)により把握する仕組みへ見直し。企業の事務負担に配慮 ※経済実体がない、いわゆる受動的所得は合算対象に。他方、実体のある事業からの所得は、子会社の税負担率にかかわらず合算対象外に 6.期限切れ租税特別措置法の延長 ・土地の売買による所有権移転登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置の延長(⇒2年) ・旅行者等が入国の際に携帯等して輸入する紙巻きたばこに係るたばこ税の税率の特例措置の延長(⇒1年) 7.災害関連税制の常設化 近年災害が頻発していることを踏まえ、災害減免法等の規定に加え、これまで災害ごとに特別立法で手当てしてきた対応を常設化し、災害対応の税制基盤を整備 8.施行日 平成29年4月1日 詳しくは下記参照先をご覧ください。 |
参照ホームページ[財務省] |