建設業労働災害防止規程変更案要綱などの資料を公表

 厚生労働省から、「第156回労働政策審議会安全衛生分科会」の資料が公表されました。今回の議題は、「建設業労働災害防止規程変更案要綱について(諮問)」、「林業・木材製造業労働災害防止規程変更案要綱について(諮問)」、「リスクアセスメント対象物健康診断に関するガイドライン案について(報告)」の3つです。

労働災害防止規程等について
1.労働災害防止規程とは
労働災害防止団体法(以下「法」という。)第36条第1項第1号の定めに基づき、業種別労働災害防止協会が設定するもの。
・会員には、当該規程の順守義務が課せられている。(法第41条第1項)
労働災害防止規程は、厚生労働大臣の認可を受けなければその効力を生じない。その変更についても同様である(法第38条第1項)。
・認可するに当たっては、厚生労働大臣労働政策審議会の意見を聞かなければならない。(法第38条第4項)

2.労働災害防止規程で定めるもの(法第37条第1項、第2項)
・適用範囲に関する事項
労働災害の防止に関し、機械、器具その他の設備、作業の実施方法等について講ずべき具体的な措置に関する事項
・上記の事項の実施を確保するための措置に関する事項
・協会が労働災害防止規程に違反した会員に対する制裁の定めをする場合には、これに関する事項は、労働災害防止規程に定めなければならない。

3.労働災害防止協会とは(参考)
・事業主及び事業主等の団体による、自主的な労働災害防止活動を促進するための措置を講じ、もって労働災害の防止に寄与することを目的として、法に基づき設立された団体。
労働災害防止協会として、厚生労働大臣が「指定業種」として指定した業種別の協会がある。
⇒現在、①「建設業」、②「陸上貨物運送事業」、③「林業・木材製造業」、④「港湾貨物運送事業」の四協会。

■建設業労働災害防止規程の変更について
・建設業労働災害防止規程は、建設業における労働災害の防止に寄与することを目的として、昭和41年に建設業労働災害防止協会(以下「建災防」という。)が制定し、労働大臣が認可したもの。
・令和5年度から、国が策定する第14次労働災害防止計画(14次防)が開始。14次防に定められた目標の達成に向け、建災防は「建設業労働災害防止5カ年計画」(以下「5カ年計画」という。)を策定した。
・今回の変更は、5カ年計画に定める目標の達成、また、墜落、転落災害防止をはじめとする労働安全衛生関係法令、ガイドライン等の改正を踏まえ、建災防会員に対し、労働災害の防止をより確実なものとするために変更を行うもの。



林業・木材製造業労働災害防止規程の変更について
林業・木材製造業労働災害防止規程は、林業・木材製造業における労働災害の防止に寄与することを目的として、昭和41年に林業・木材製造業労働災害防止協会(以下「林災防」という。)が制定し、労働大臣が認可したもの。
・今回は、令和5年度から、国が策定する第14次労働災害防止計画(14次防)が開始していることや、伐木等作業に係る労働安全衛生法令、ガイドライン等の改正、近年の林材業における死亡災害の発生状況及びその要因の分析結果を踏まえ、林災防会員に対し労働災害の防止をより確実なものとするために変更を行うもの。



リスクアセスメント対象物健康診断に関するガイドライン案について(報告)
ガイドラインの概要/健康診断の種類と目的
第1:趣旨・目的
事業者、労働者、産業医、健康診断実施機関及び健康診断の実施に関わる医師又は歯科医師(以下「医師等」)が、リスクアセスメント対象物健康診断の趣旨・目的を正しく理解し、その適切な実施が図られるよう、基本的な考え方及び留意すべき事項を示したもの。

第2:基本的な考え方
・安衛則577条の2第3項に基づく健康診断(第3項健診)は、特殊健康診断のように特定の業務に常時従事する労働者に対して一律に健康診断の実施を求めるものではなく、自律的な化学物質管理の一環として、リスクアセスメントの結果に基づき、健康障害発生リスクが高いと判断された労働者に対して、医師等が必要と認める項目について、健康障害発生リスクの程度及び有害性の種類に応じた頻度で実施するもの。

・ばく露防止対策が適切に実施され、労働者の健康障害発生リスクが許容される範囲を超えないと判断すれば、基本的にリスクアセスメント対象物健康診断を実施する必要はない。

・ばく露防止対策を十分に行わず、リスクアセスメント対象物健康診断で労働者のばく露防止対策を補うという考え方は適切ではない。

第3:留意すべき事項
リスクアセスメント対象物健康診断の種類と目的】
・安衛則577条の2第3項に基づく健康診断(第3項健診)は、リスクアセスメントの結果、健康障害発生リスクが許容される範囲を超えると判断された場合に、関係労働者の意見を聴き、必要があると認められた者について、当該リスクアセスメント対象物による健康影響を確認するために実施するもの。

・安衛則577条の2第4項に基づく健康診断(第4項健診)は、ばく露の程度を抑制するための局所排気装置が正常に稼働していない又は使用されているはずの呼吸用保護具が使用されていないなど、何らかの異常事態が判明し、労働者が濃度基準値を超えて当該リスクアセスメント対象物にばく露したおそれが生じた場合に実施する趣旨。

◆実施の要否の判断方法
リスクアセスメント対象物健康診断の実施の要否の判断方法】
(1)第3項健診の実施の要否の考え方

・以下の状況を勘案し、労働者の健康障害発生リスクが許容できる範囲を超えるか否か検討。

・当該化学物質の有害性及びその程度・ばく露の程度や取扱量・労働者のばく露履歴

・作業の負荷の程度・工学的措置の実施状況・呼吸用保護具の使用状況等

・以下のいずれかに該当する場合は、健康診断を実施することが望ましい。
 ①濃度基準告示第3号に規定する努力義務を満たしていない場合
 ②工学的措置や保護具でのばく露の制御が不十分と判断される場合
 ③濃度基準値がない物質について、漏洩事故等により、大量ばく露した場合
 ④リスク低減措置が適切に講じられているにも関わらず、何らかの健康障害が顕在化した場合

(2)第4項健診の実施の要否の考え方
・以下のいずれかに該当する場合は、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあることから、速やかに実施する必要。

・呼吸域の濃度が、濃度基準値を超えていることから、工学的措置の実施又は呼吸用保護具の使用等の対策を講じる必要があるにも関わらず、以下に該当する状況が生じた場合
 ①工学的措置が適切に実施されていないことが判明した場合
 ②必要な呼吸用保護具を使用していないことが判明した場合
 ③呼吸用保護具の使用方法が不適切で要求防護係数が満たされていないと考えられる場合
 ④その他、工学的措置や呼吸用保護具でのばく露の制御が不十分な状況が生じていることが判明した場合

・漏洩事故等により、濃度基準値がある物質に大量ばく露した場合

◆実施頻度及び実施時期/検査項目
リスクアセスメント対象物健康診断の実施頻度及び実施時期】

・第3項健診の実施頻度は、産業医又は医師等の意見に基づき事業者が判断。
<実施頻度の設定例>※以下の有害性ごとに健康障害リスクが許容される範囲を超えると判断された場合の実施頻度
 ①急性毒性:6月以内ごとに1回
 ②がん原性物質又はGHS分類の発がん性の区分が区分1:1年以内ごとに1回
 ③急性以外の健康障害(歯科領域の健康障害を含み、発がん性を除く。):3年以内ごとに1回

・第4項健診は、濃度基準値を超えてばく露したおそれが生じた時点で、事業者及び健康診断実施機関等の調整により合理的に実施可能な範囲で、速やかに実施する必要。

リスクアセスメント対象物健康診断の検査項目】
・濃度基準値の根拠となった一次文献等やSDS記載の有害性情報等を参照して設定(「生殖細胞変異原性」及び「誤えん有害性」は検査の対象から除外)。

・歯科領域のリスクアセスメント対象物健康診断は、クロルスルホン酸、三臭化ほう素、5,5-ジフェニル-2,4-イミダゾリジンジオン、臭化水素及び発煙硫酸の5物質を対象とする。

・第3項健診の検査項目
業務歴の調査、作業条件の簡易な調査等によるばく露の評価及び自他覚症状の有無の検査等を実施。必要と判断された場合には、標的とする健康影響に関するスクリーニングに係る検査項目を設定。

・第4項健診の検査項目
八時間濃度基準値を超えてばく露した場合、ただちに健康影響が発生している可能性が低いと考えられる場合は、業務歴の調査、作業条件の簡易な調査等によるばく露の評価及び自他覚症状の有無の検査等を実施。
短時間濃度基準値を超えてばく露した場合、主として急性の影響に関する検査項目を設定。

・歯科領域の検査項目歯科医師による問診及び歯牙・口腔内の視診。

◆配置前・配置転換後の健康診断その他の事項
【配置前及び配置転換後の健康診断】

リスクアセスメント対象物健康診断には、配置前の健康診断は含まれていないが、配置前の健康状態を把握しておくことが有意義であることから、一般健康診断で実施している自他覚症状の有無の検査等により健康状態を把握する方法が考えられる。

・遅発性の健康障害が懸念される場合には、配置転換後であっても、例えば一定期間経過後等、必要に応じて、医師等の判断に基づき定期的に健康診断を実施することが望ましい。

リスクアセスメント対象物健康診断の対象とならない労働者に対する対応】
リスクアセスメント対象物健康診断の対象とならない労働者については、安衛則第44条第1項に基づく定期健康診断で実施されている業務歴の調査や自他覚症状の有無の検査において、化学物質を取り扱う業務による所見等の有無について留意することが望ましい。

・業務による健康影響が疑われた労働者については早期の医師等の診察の受診を促し、また、同様の作業を行っている労働者については、リスクアセスメントの再実施及びその結果に基づくリスクアセスメント対象物健康診断の実施を検討すること。

リスクアセスメント対象物健康診断の費用負担】
リスクアセスメント対象物健康診断は、業務による健康障害発生リスクがある労働者に対して実施するものであることから、その費用は事業者が負担しなければならない。派遣労働者については、派遣先事業者に実施義務があることから、その費用は派遣先事業者が負担しなければならない。

・健康診断の受診に要する時間の賃金については、労働時間として事業者が支払う必要。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35027.html