「労働時間適正把握のための使用者ガイドライン」が公表

 労働基準法は、使用者に対して労働時間を適切に管理する責務を課していますが、近年、割増賃金の未払いや過重な長時間労働が社会問題化していることから、これらの問題を防止するための労働時間管理のための具体的な措置について、ガイドラインが策定、公表されました。

ガイドラインの概要

ガイドラインの適用範囲
当該ガイドラインの対象事業場は、労基法のうち労働時間に係る規定が適用される全ての事業場であること

当該ガイドラインに基づき使用者が労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者は、労基法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者を除く全ての者であること

当該ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること

◎労働時間の考え方
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。以下のような時間は、労働時間として扱わなければならない

ア.使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

イ.使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

ウ.参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

◎労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
(1)始業・終業時刻の確認及び記録

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
ア.使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること

イ.タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
ア.自己申告制の対象となる労働者に対して、当該ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと

イ.実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、当該ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと

ウ.自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること

エ.自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること

オ.自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと

◎賃金台帳の適正な調整
使用者は、労基法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと、そして、違反した場合は、罰金に処されること

◎労働時間の記録に関する書類の保存
使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労基法第109条に基づき3年間保存しなければならないこと

◎労働時間を管理する者の職務
事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること

◎労働時間等設定改善委員会等の活用
使用者は、事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと


詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html