精神障害の労災認定基準-パワハラ防止対策の法制化を受けた見直し

 厚生労働省から、令和2年5月11日に開催された「第5回 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の資料が公表されています。同検討会では、令和2年6月よりパワーハラスメント防止対策が法制化されることから、心理的負荷評価表の見直しについての検討を重ねてきましたが、今回の検討会の資料として、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」が提示されています。

この報告書では具体的出来事等へのパワーハラスメントの追加などについて、次のような方向性が示されています。

■業務による心理的負荷評価表に係る具体的出来事等への追加
パワーハラスメントを受けたことによる心理的負荷の強度等については、現行では、対人関係の類型の一つである「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の具体的出来事に当てはめて評価しているが、今般、職場におけるパワーハラスメントの定義が法律上規定されたことを踏まえ、心理的負荷評価表の具体的出来事として、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を追加することが適当である。

●「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の具体的出来事を新設した場合であっても、例えば、優越性のない同僚間の暴行や嫌がらせ、いじめなどは、「パワーハラスメント」に該当しないことになるため、これらについては、引き続き、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の具体的出来事で評価する必要がある。

なお、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という出来事について、心理的負荷の強度の具体例については、次のように示すことが適当とされています。

心理的負荷が「強」となる具体例
○上司等から治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
○上司等から暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合
○上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合
 ・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
 ・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃
 ・上司等から心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃・精神的攻撃を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

心理的負荷の強度が、「中」又は「弱」となる具体例
○上司等による次のような身体的攻撃・精神的攻撃が行われ、行為が反復・継続していない場合
 ・治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃
 ・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
 ・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

○上司等による「中」に至らない程度の身体的攻撃・精神的攻撃が行われた場合

 今回の検討は、パワーハラスメントに係る出来事に関して、現行の認定基準を前提として、心理的負荷評価表の出来事の追加・修正等を検討したものですが、精神医療の分野の研究も日々進んでおり、また、社会・経済状況の変化が著しい昨今においては、労災認定の基準等に関して今後も適宜検討していくことが重要であると考えられています。

 コロナ禍の中、労働環境の急激な変化で、誰もが強いストレスを抱えていることでしょう。こういった状況ではハラスメントも起こりやすいと考慮し、注意喚起を図っていきましょう。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11184.html

新型コロナウイルス対策 中小の助成率100%などの雇調金の特例措置の更なる拡大・実施が決定

令和2年4月25日に、雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大についてお知らせがありましたが、同年5月1日、この拡充について関係省令が公布されました。今回の拡充の概要は次のとおりです。

1.雇用調整助成金の特例措置のポイント

先般(4月25日)、雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大についてお知らせしていましたが、5月1日、関係省令が公布されました。令和2年4月8日以降の休業等に遡及して適用されます。
具体的な内容は以下のとおりです。

(1)中小企業が都道府県知事からの休業要請を受ける等、一定の要件を満たす場合は、休業手当全体の助成率を特例的に100%とします。
休業等要請を受けた中小企業が解雇等を行わず雇用を維持している場合であって、下記の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に100%とします。

新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であって、これに協力して休業等を行っていること

・以下のいずれかに該当する手当を支払っていること
1.労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること
2.上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(支払率が60%以上の場合に限る)
※教育訓練を行わせた場合も同様

(2)(1)に該当しない場合であっても、中小企業が休業手当を支給する際、支払率が60%を超える部分の助成率を特例的に100%とします。
中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超えて休業手当を支給する場合、60%を超える部分に係る助成率を特例的に100%にします。
※教育訓練を行わせた場合も同様

※対象労働者1人1日当たり8,330円が上限です。


2.生産指標の比較対象となる月の要件を緩和しました(4月22日~)

新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置では、雇用助成助成金の支給に当たって、最近1か月間(計画届を提出する月の前月)の生産指標(※1)と前年同月の生産指標とを比較(※2)することとし、事業所を設置して1年に満たず、前年同月と比較できない事業所については、令和元年12月と比較(※2)できることとしていました。

今般、これを緩和し、前年同月とは適切な比較ができない場合は、前々年同月との比較や、前年同月から12か月のうち適切な1か月(※3)との比較が可能となりました。
これにより、令和2年1月以降に設置された雇用保険適用事象所も助成を受けることできるようになります。

※1売上高又は生産量等の事業活動を示す指標

※2生産指標が5%以上減少していることが必要
(休業期間の初日が緊急対応期間外である場合は10%以上の減少が必要)

※3比較に用いる1か月はその期間を通して雇用保険適用事業所でありかつ当該1か月の期間を通して雇用保険被保険者を雇用している月である必要があります。

なお、5月中にオンラインでの申請ができるように準備を進めています。詳細については、あらためて公表しますので、お問い合わせは、もうしばらくお待ち下さい。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11128.html

令和元年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表


厚生労働省から、「令和元年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果」が公表されました(令和2年5月1日公表)。この重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の「使い捨て」が疑われる事業場などを含め、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施されるものです。今回公表されたのは、令和元年11月に8,904事業場に対して実施された重点監督の結果です。その結果、6,707事業場(全体の75.3%)で労働基準関係法令違反が認められたということです。

【重点監督結果のポイント】
(1)監督指導の実施事業場:8,904事業場
(2)主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
 ①違法な時間外労働があったもの:3,602事業場(40.5%)
  うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの:913事業場(25.3%)
  うち、月100時間を超えるもの:537事業場(14.9%)
  うち、月150時間を超えるもの:110事業場(3.1%)
  うち、月200時間を超えるもの:23事業場(0.6%)

 ②賃金不払残業があったもの:654事業場(7.3%)

 ③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:1,832事業場(20.6%)

(3)主な健康障害防止に係る指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
 ①過重労働による健康障害防止措置が
  不十分なため改善を指導したもの:3,443事業場(38.7%)
 ②労働時間の把握方法が不適正なため指導したもの:1,553事業場(17.4%)

法違反の状況(是正勧告書を交付したもの)

監督指導実施状況
令和元年度過重労働解消キャンペーン(11月)の間に、8,904事業場に対し監督指導を実施し、6,707事業場(全体の75.3%)で労働基準関係法令違反が認められた。主な法違反としては、違法な時間外労働があったものが3,602事業場、賃金不払残業があったものが654事業場、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが1,832事業場でした。f:id:koyama-sharoushi:20200512091014j:plainまた、監督指導を実施した事業場のうち、3,443事業場(全体の38.7%)に対して、長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導等の過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導し、1,553事業場(全体の17.4%)に対して、労働時間の把握が不適正であるため、厚生労働省で定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導したということです。

前回の重点監督(平成30年11月に実施)では、8,494事業場のうち5,714事業場(全体の67.3%)で労働基準関係法令違反があったという結果でしたので、今回は、違反率が上がったことになります。

厚生労働省では、今後も、長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行っていくとしています。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11060.html

厚生年金保険料・労働保険料の納付を猶予

 厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、厚生年金保険料や労働保険料等の納付を納付猶予する特例を実施することを明らかにしている。これらの特例の実施については、国税に係る関係法案が国会で成立することが前提となります。

新型コロナウイルス感染症の影響により、事業等に係る収入に相当の減少があった事業主は、申請により、1年間、特例として厚生年金保険料等の納付を猶予することができるようになるものです。

この納付猶予の特例が適用される場合、担保の提供は不要となり、延滞金もかかりません。対象となるのは、

(1)新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1ヵ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること

(2)一時に納付を行うことが困難であること

のいずれも満たす事業主です。

対象となる期間は、令和2年2月1日から令和3年1月31日までとなっており、この期間に納期限が到来する厚生年金保険料等が対象となります。


次に、新型コロナウイルス感染症の影響により、労働保険料等を納付することが困難となった場合の猶予制度です。新型コロナウイルス感染症の発生に伴い、財産に相当の損失を受けた場合について、一定の要件に該当するときは、納付の猶予が認められるというものです。納付の猶予が認められると、猶予期間中の延滞金が免除され、財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。

上記の一定の要件とは、次の3つです。

(1)事業主が、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により、全積極財産(負債を除く資産)の概ね20%以上に損失を受けたこと

(2)納付すべき労働保険料等が、(1)の損失を受けた日以後1年以内に納付するものであること(労働保険料等の納期限が、その損失を受けた日以後に到来するものであること)

(3)申請書が提出されていること


猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内で、被害のあった財産の損失の状況及び財産の種類を勘案して決定されます。猶予期間は原則1年以内ですが、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、通常の場合の納付の猶予を申請することにより、災害による納付猶予の猶予期間と合わせて最長3年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。

また、厚労省は、新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、社会保険の手続きや、年度初めである4月の従業員の入社・退社に伴う日本年金機構への各種手続きについては、「電子申請」や「郵送」の積極的な活用を呼びかけています。なお、4月1日からは、資格取得届・資格喪失届など主要な手続きについて、従来の電子証明書(有料)のほか、「GビズID」を活用したID・パスワード方式(無料)による電子申請が利用できます。

「GビズID」を活用した電子申請にあたっては、日本年金機構ホームページから無料でダウンロードできる「届書作成プログラム」をご利用ください。電子申請のご利用方法については、日本年金機構ホームページをご参照いただくか、最寄りの年金事務所にお問い合わせください。

日本年金機構 電子申請ホームページ(「届書作成プログラム」のダウンロードはこちら。)
https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/index.html

「GビズID」を活用した社会保険手続の電子申請について
https://www.mhlw.go.jp/content/000561645.pdf

パンフレット「社会保険手続きには、電子申請が便利!」
(【GビズID】届書作成プログラムを利用して届書データ(CSVファイル)を作成される方向け)
https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/program/download.files/pamphlet01.pdf




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10925.html

新型コロナウイルス対策 雇用調整助成金の特例措置の拡大について

厚生労働省から、「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置を追加実施するとともに、申請書類の大幅な簡素化を行います」という案内がありました。同省では、雇用調整助成金の特例措置を拡充し、令和2年4月1日から同年6月30日までの間を緊急対応期間として、上乗せの特例措置を講じることとしていましたが、その詳細が決定されたものです。緊急対応期間に適用される特例措置の概要は次のとおりです。

1.雇用調整助成金の特例措置の追加実施について
 今般の新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動が急激に縮小する事業所が生じ、地域経済への影響が見込まれることから、厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、令和2年2月14日、同月28日及び3月10日に雇用調整助成金に係る特例措置を講じています。
 今般、これを拡充し、令和2年4月1日から同年6月30日までの間は、緊急対応期間として、上乗せの特例措置を講じます。

(1)緊急対応期間(令和2年4月1日~同年6月30日)の休業等の上乗せ特例
○休業又は教育訓練を実施した場合の助成率を大幅に引き上げます。
 上記期間内において、休業又は教育訓練を実施した場合の助成率を、中小企業については2/3から4/5へ、大企業については1/2から2/3へ引き上げます。
さらに、事業主が解雇等を行わず、雇用を維持した場合、当該助成率を、中小企業については4/5から9/10へ、大企業については2/3から3/4へ引き上げます。

○教育訓練の加算額を大幅に引き上げます。
 上記期間内において、教育訓練が必要な被保険者の方に対して教育訓練を実施した場合の加算額(対象被保険者1人1日当たり)を、中小企業については1,200円から2,400円へ、大企業については1,200円から1,800円に引き上げます。

○教育訓練の範囲を大幅に拡大します。
 上記期間内において、自宅でのインターネット等を用いた教育訓練もできるようするなど教育訓練の範囲の拡大を行うとともに、教育訓練の受講日に教育訓練を受けた労働者を業務に就かせても良いこととします。

○生産指標の要件を緩和します。
 生産指標の確認は計画届の提出があった月の前月と対前年同月比で10%の減少が必要でしたが、上記期間内においては、これを5%の減少とします。

○支給限度日数にかかわらず活用できます。
 上記期間内に実施した休業は、1年間に100日の支給限度日数とは別枠で利用できることとします。

雇用保険の被保険者でない労働者も対象とします。
 上記期間内において、雇用保険の被保険者ではない労働者も休業の対象に含めます。具体的には、週20時間未満の労働者(パート・アルバイト(学生も含む)等)などが対象となります。

(2)雇用調整助成金を活用しやすくするための運用面の特例
○事後提出が可能な期間を延長します。
 既に休業を実施し、休業手当を支給している場合でも、令和2年5月31日までは、事後に計画届を提出することが可能となっていましたが、この期間を同年6月30日までに延長します。

○短時間休業を大幅に活用しやすくします。
 短時間休業については、従来、事業所等の労働者が一斉に休業する必要がありましたが、事業所内の部門、店舗等施設ごとの休業も対象とするなど、活用しやすくします。

○休業規模の要件の緩和
 対象労働者の所定労働日数に対する休業等の延日数の割合(休業規模要件)について、中小企業は1/20以上、大企業は1/15以上としていましたが、これを中小企業は1/40以上、大企業は1/30以上に緩和します。

○残業相殺制度を当面停止します。
 支給対象となる休業等から時間外労働等の時間を相殺して支給すること(残業相殺)を当面停止します。


2.申請書類の大幅な簡素化について
 新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置に関する申請書類等については、大幅に簡素化し、事業主の申請手続きの負担を軽減するとともに、支給事務の迅速化を図ります。
具体的には、
・記載事項の半減(自動計算機能付き様式の導入や残業相殺の停止等)
・記載事項の簡略化(休業等の実績を日ごとではなく合計日数のみで可とする)
・添付書類の削減
などを行います。
 また、出勤簿や給与台帳でなくても、手書きのシフト表や、給与明細のコピー等でも良いとするなど、事業所にある既存の書類を活用して、添付書類を提出することができるようにします。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10782.html

新型コロナウイルス対策 企業の方向けQ&A令和2年4月10日時点版を公表

 厚生労働省では、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」を公表していますが、4月10日時点版が公表されています。今回の更新で、問題となっている「緊急事態宣言や要請・指示を受けた事業の休止に伴う休業」に関するQ&Aが追加されています。

問 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示により、事業を休止し、労働者を休業させる場合、どのようなことに注意すべきですか。
答 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示により事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、労使がよく話し合って、休業中の手当の水準、休業日や休業時間の設定等について、労働者の不利益を回避する努力をお願いします。

また、労働基準法上の休業手当の要否にかかわらず、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対しては、雇用調整助成金が、事業主が支払った休業手当の額に応じて支払われます。
今般の新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、全国において、解雇等を行わず、雇用を維持する企業に対して、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、助成率を中小企業は90%、大企業でも75%に引き上げるなどのさらなる特例措置を講じており、事業主の皆様を積極的に支援していきます。


問 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示を受けて事業を休止する場合、労働基準法の休業手当の取扱はどうなるでしょうか。
答 労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありませんが、不可抗力による休業と言えるためには、

①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること

という要素をいずれも満たす必要があります。
①に該当するものとしては、例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。
②に該当するには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、

・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか

といった事情から判断されます。
したがって、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。
(疑問点等があれば、お近くの労働局及び労働基準監督署に御相談ください。)

問 労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合、休業手当はどのようにすべきですか。
答 新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。
具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。
具体的な申請手続き等の詳細については、加入する保険者に確認ください。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

「働き方改革推進支援助成金」労働時間短縮・年休促進支援コース リーフレットを公表

 



令和2年4月1日施行の「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令」により、これまでの「時間外労働等改善助成金」が「働き方改革推進支援助成金」に改められ、新たなコースとして「労働時間短縮・年休促進支援コース」が設けられました。
 これを受けて、厚生労働省から、労働時間短縮・年休促進支援コースを紹介するリーフレットが公表されました。 このコースは、生産性を向上させ、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を助成するものです。

■課題別にみる助成金の活用事例  

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■対象事業主
労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業事業主(※1)であり、全ての対象事業場について下記に該当すること。
  ・36協定を締結している
  ・年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している
② 交付申請時点で、「成果目標」①から④の設定に向けた条件を満たしていること。

(※1)中小企業事業主の範囲
AまたはBの要件を満たす企業が中小企業になります。
 
■支給対象となる取り組み~いずれか1つ以上を実施~
労務管理担当者に対する研修(※2)
② 労働者に対する研修(※2)、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取り組み
労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新(※3)
⑦ テレワーク用通信機器の導入・更新(※3)
⑧ 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新(※3)
(※2) 研修には、業務研修も含みます。
(※3)原則として、パソコン、タブレットスマートフォンは対象となりません。

■成果目標
①全ての対象事業場において、月60時間を超える 36協定の時間外労働時間数を縮減させること。
・時間外労働時間数で月60時間以下に設定
・時間外労働時間数で月60時間を超え月80時間以下に設定

②全ての対象事業場において、所定休日を1日から4日以上増加させること。

③交付要綱で規定する特別休暇(病気休暇、教育 訓練休暇、ボランティア休暇)のいずれか1つ以上を全ての対象事業場に新たに導入すること。

④時間単位の年次有給休暇制度を、全ての対象事業場に新たに導入させること。

・上記の成果目標に加えて、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上または、5%以上で賃金引き上げを行うことを成果目標に加えることができます。

■支給額
「成果目標」の達成状況に応じて、支給対象となる取り組みの実施に要した経費の一部を支給します。
【助成額】
以下のいずれか低い額
Ⅰ ①~④の上限額および加算額の合計額
Ⅱ 対象経費の合計額×補助率3/4(※4)
(※4) 常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取り組みで⑥から⑧を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
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詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/content/000617977.pdf