「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」について閣議決定、国会に提出

 フリーランスについては、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和4年6月7日)において、取引適正化のための法制度について検討し、国会に提出することとされました。これを受け、内閣官房を中心に、公正取引委員会経済産業省中小企業庁厚生労働省で検討を行い、令和5年2月24日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)について閣議決定され、国会に提出されました。
法案では、働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的とし、特定業務委託事業者(発注事業者)及び特定受託事業者(フリーランス)の取引について、特定業務委託事業者において、書面等での契約内容の明示、報酬の60日以内の支払い、募集情報の的確な表示、ハラスメント対策等の措置を講じることとされています。

■特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)の概要(新規)
【趣旨】
我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的として、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずる。

【概要】
1.対象となる当事者・取引の定義
(1)「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいう。
(2)「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者をいう。
(3)「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。
(4)「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するものをいう。
※「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まない。

2.特定受託事業者に係る取引の適正化
(1)特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面又は電磁的方法により明示しなければならないものとする。
※従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に対し業務委託を行うときについても同様とする。

(2)特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、支払わなければならないものとする。(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)

(3)特定受託事業者との業務委託(政令で定める期間以上のもの)に関し、①〜⑤の行為をしてはならないものとし、⑥・⑦の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないものとする。
①特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
②特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
③特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
④通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること

3.特定受託業務従事者の就業環境の整備
(1)広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならないものとする。
(2)特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないものとする。
(3)特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならないものとする。
(4)継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならないものとする。

4.違反した場合等の対応
公正取引委員会中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものとする。

※命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処する。法人両罰規定あり。

5.国が行う相談対応等の取組
国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとする。

【施行期日】
公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日


フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
フリーランスについては、成長戦略実行計画(令和2年7月17日)において、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインを策定することとされました。
これを受け、令和3年3月26日に、内閣官房公正取引委員会中小企業庁厚生労働省の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定しました。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(概要)】
・事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインについて、内閣官房公正取引委員会中小企業庁厚生労働省連名で策定し、フリーランスとして安心して働ける環境を整備。

第1:フリーランスの定義
・本ガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者。

第2:独禁法、下請法、労働関係法令との適用関係
独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引に適用。
・下請法は、取引の発注者が資本金1000万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用。
・これらの法律の適用に加えて、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けていると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用。

独禁法、下請法】
第3:フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項
1.フリーランスとの取引に係る優越的地位の濫用規制についての基本的な考え方
・自己の取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、フリーランスに対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法により規制される。

2.発注時の取引条件を明確にする書面の交付に係る基本的な考え方
・優越的地位の濫用となる行為を誘発する原因とも考えられ、発注事業者が発注時の取引条件を明確にする書面をフリーランスに交付しない場合は、独占禁止法上不適切。
・下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者が書面をフリーランスに交付しない場合は、下請法第3条で定める書面の交付義務違反となる。

3.独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請法上問題となる行為類型
・優越的地位の濫用につながり得る行為について、行為類型ごとに下請法の規制の対象となり得るものも含め、その考え方を明確化。
(1)報酬の支払遅延(2)報酬の減額(3)著しく低い報酬の一方的な決定
(4)やり直しの要請(5)一方的な発注取消し(6)役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い
(7)役務の成果物の受領拒否(8)役務の成果物の返品(9)不要な商品又は役務の購入・利用強制
(10)不当な経済上の利益の提供要請(11)合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定
(12)その他取引条件の一方的な設定・変更・実施

第4:仲介事業者が遵守すべき事項
1.仲介事業者とフリーランスとの取引について

・仲介事業者は、フリーランスが役務等を提供する機会を獲得・拡大することや、発注事業者や消費者が、フリーランスから良質廉価な役務等を受けることに貢献。
・一方で、今後フリーランスと仲介事業者との取引の増加により、仲介事業者が取引上優越した地位に立ち、フリーランスに対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合も考えられる。

2.規約の変更による取引条件の一方的な変更
・規約の変更を一方的に行うことにより、自己の取引上の地位がフリーランスに優越している仲介事業者が、フリーランスに対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるときは、優越的地位の濫用として問題となる。

【労働関係法】
第5:現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準

1.フリーランスに労働関係法令が適用される場合
フリーランスとして請負契約や準委任契約などの契約で仕事をする場合であっても、労働関係法令の適用に当たっては、契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて、「労働者」かどうか判断。
労基法上の「労働者」と認められる場合は、労働基準法の労働時間や賃金等に関するルールが適用される。
・労組法上の「労働者」と認められる場合は、団体交渉を正当な理由なく拒んだりすること等が禁止される。

2・3労働基準法における「労働者性」の判断基準とその具体的な考え方
(1)「使用従属性」に関する判断基準
①「指揮監督下の労働」であること(労働が他人の指揮監督下において行われているか)
②「報酬の労務対償性」があること(報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか)

(2)「労働者性」の判断を補強する要素
①事業者性の有無(仕事に必要な機械等を発注者等と受注者のどちらが負担しているか等)
②専属性の程度(特定の発注者等への専属性が高いと認められるか。)

4・5労働組合法における「労働者性」の判断要素とその具体的な考え方
(1)基本的判断要素
①事業組織への組み入れ(業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか)
②契約内容の一方的・定型的決定(労働条件や労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか)
③報酬の労務対価性(労務供給者の報酬が労務供給に対する対価などとしての性格を有するか)

(2)補充的判断要素
④業務の依頼に応ずべき関係(相手方からの個々の業務の依頼に対し、基本的に応ずべき関係にあるか)
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供(労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか等)

(3)消極的判断要素(この要素が肯定される場合には、労働組合法上の労働者性が弱まる場合がある)
⑥顕著な事業者性(恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者か)




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30341.html

労働政策審議会労働政策基本部会が報告書を公表

 厚生労働省から、「労働政策審議会労働政策基本部会報告書~変化する時代の多様な働き方に向けて~」が公表されました。この報告書では、人材育成・リスキリング、人事制度、労働移動などについて、働き方の現状と課題が分析されており、その上で今後の労働政策の方向性が示されています。基本部会では、この報告の内容を踏まえ、労使において課題の共有がなされ、また労働政策審議会の関係分科会や部会等においても、速やかに必要な施策を検討することを求めています。

労働政策審議会労働政策基本部会報告書(概要)~変化する時代の多様な働き方に向けて~】

■働き方の現状と課題について

(1)人材育成・リスキリング
(企業が成長していくためには人材投資・人材育成が重要)
⚫企業や国全体の経済成長を考えると、人材投資が重要。人材育成に積極的な企業への転職が加速する可能性。
⚫一人ひとりのキャリア志向を大切にしつつ、個人の能力や個性を丁寧に把握する「高解像度な人事評価・育成」が重要。
⚫職業人生も長期になることから、中高年のリスキリングを含めた能力開発も重要。

(企業は変化に対応するため必要となるスキルを考え、労働者は変化を前向きに捉えることが重要)
⚫企業は、経営戦略として、社会経済の変化に対応する必要性や、企業としてどう変わりたいのか、そのためにはどういった能力や技術が必要で、何を学ぶべきなのかといった具体像を労働者に説明することが必要。
⚫新しいスキル取得による能力の向上や新しいことへの挑戦を適正に評価・処遇することが、社員のリスキリングにつながる。
⚫リスキリングは、なぜ学ぶのか、学んだ上で自分がどんな仕事ができるようになるかといった目的意識が重要。

(2)人事制度について
(ジョブ型人事の動き)
⚫ジョブ型雇用は、狭い意味では職務が雇用契約に明記・限定される(それに応じて労働時間も自ずと限定される)雇用形態であり、徹底した分業の中での限定的な職務範囲の中での雇用管理として、欧米ではブルーカラーを中心に使われていたが、近年、日本においては、ホワイトカラーを中心とした職務と処遇の明確化といった観点からの導入の動きがある。ジョブローテーションによる若手の育成が行いにくくなることなどの留意点もあることから、多様な人材の力の発揮と人材の育成を阻害することがないよう、企業内での労使での対話が特に重要。

⚫ジョブ型人事の導入には、①ポストに見合った人材を広く社内外から求める、②キャリアアップに伴う再教育支援の仕組み、③労働者一人ひとりのキャリア志向に対応する、④職務以外の情報共有や組織貢献意欲を促す仕組み等の配慮も必要。

(大企業は、「メンバーシップ型人事」と「ジョブ型人事」の間で、バリエーションのある人事制度を導入)
⚫人事制度に関する企業ヒアリングを数社行った中では、ジョブ型人事制度を導入している企業であっても、採用や人事異動・配置については、いわゆる欧米のジョブ型雇用とは違い、①新卒採用の際には職務遂行能力ではなく潜在能力を重視し、採用後一定期間研修を行う、②本人の希望による公募制を行いつつも、最終的な人事異動の権限は会社に残るなど、いわゆる「メンバーシップ型人事」と「ジョブ型人事」の間でバリエーションのあるものが多い。各社において、経営戦略上もっともふさわしい人事制度への模索が続いていくものと考えられる。

(3)労働移動について
(転職を希望する労働者が、内部労働市場と外部労働市場を行き来できるシームレスな労働市場の整備が必要)
⚫労働移動は、より良い条件の仕事に就くことができるチャンスでもあるので、ポジティブにとらえていくことも必要。
⚫労働移動に中立的な人事制度設計の取り組みが必要。
⚫今後は、外部労働市場の機能(多様な教育訓練機会やマッチング機能など)を活性化しながら、併せて内部労働市場を改革(社内公募・マッチング:本人の希望も考慮した人事異動)し、転職を希望する労働者が、内部労働市場と外部労働市場を行き来できるシームレスな労働市場を整備していくことが必要。

■今後の労働政策の方向性について
(1)企業に求められる対応
⚫リスキリングの必要性を明確にした上で、経営者、マネージャー、現場労働者の全てのレベルで、リスキリングを含めた能力開発に主体的に取り組んでいくための動機付け・環境整備が必要。
⚫中間管理職のマネジメント業務が大きく変化・増加(ワークライフバランスの確保、エンゲージメントの向上)。人事部で、管理職向けのマネジメント研修(1on1ミーティング)の実施やその見直し等、管理職の業務負担の軽減を図ることが重要。

(2)労働者に求められる対応
⚫多くの変化が短期間に起こる現状では、過剰に変化を恐れるのではなく、変化を前向きに捉えて対応していくことが求められる。
⚫長期雇用を前提とした企業では、企業が広い人事権を持って人事異動やOJT中心の人材育成を実施しており、企業との長期的な関係により、労働者が自律的にキャリア形成していくという意識が薄れる可能性もある。労働者自らが自律的にキャリア形成や学びを深めていくことが必要。

(3)労働政策において今後検討すべき対応
⚫多様な人材が能力を発揮できるよう、女性や高齢者などの働き方に中立的な税制・社会保障制度の構築や、雇用によらない働き方など様々な働き方の人を重層的なセーフティネットに組み入れていくことが課題。
⚫自発的に労働移動を行う労働者の転職の参考となるよう、①労働市場見える化(職場情報・職業情報)、②異業種間でも業務の親和性がある仕事の事例の積極的周知広報、③ハローワークサービスのデジタル化による、オンラインサービスやキャリアコンサルティング機能の充実など在職者向け支援の強化、等の転職しやすい環境整備(労働市場の基盤整備)を進めていくべき。
⚫今は労働政策の大きな転換期にあり、従来の「安全・安心」を重視する対応に加え、「労働市場セーフティネットを整備しつつ、労働者のスキルアップ・向上を目指す」ことを重視していくべき。

(4)社会全体に求められる対応(一人ひとりが自律的にキャリアについて考える)
⚫一人ひとりの労働者が自律的にキャリアについて考える方策を社会全体で危機感を持って検討していくことが必要。
⚫リスキリングについての支援も、労働者一人ひとりが力強く成長できるよう、個人への直接支援が重要。

基本部会では、この報告の内容を踏まえ、労使において課題の共有がなされ、また、労働政策審議会の関係分科会や部会等においても、速やかに必要な施策を検討することを求めています。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32734.html

令和6年4月からの無期転換ルール及び労働契約関係の明確化についてリーフレット等を公表

 「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第39号)」などが公布され、令和6年4月1日から、無期転換ルール及び労働契約関係の明確化が図られることになっています。これを受けて、厚生労働省では、令和6年4月からの無期転換ルール及び労働契約関係の明確化に関する専用のページを設け、各種リーフレットや通達などを紹介しています。

施行は約1年後ですが、まずは、リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」を確認し、改正の概要を把握しておくことをお勧めいたします。

■労働条件明治の制度改正のポイント


【全ての労働者に対する明示事項】
・就業場所・業務の変更の範囲の明示【労働基準法施行規則5条の改正】
全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」※1についても明示が必要になります。

【有期契約労働者に対する明示事項等】
・更新上限の明示【労働基準法施行規則5条の改正】
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。

・更新上限を新設・短縮する場合の説明【雇止め告示※2の改正】
下記の場合は、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由を有期契約労働者にあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要になります。
ⅰ 最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合
ⅱ 最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合

・無期転換申込機会の明示【労働基準法施行規則5条の改正】
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと※3に、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。

・無期転換後の労働条件の明示【労働基準法施行規則5条の改正】
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと
※3に、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

・均衡を考慮した事項の説明【雇止め告示※2の改正】
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項※4(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。

※1 「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
※2 有期契約労働者の雇止めや契約期間について定めた厚生労働大臣告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)
※3 初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに、今回の改正による無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
※4 労働契約法3条2項において、労働契約は労働者と使用者が就業の実態に応じて均衡を考慮しつつ締結又は変更すべきものとされています。

(注)無期転換ルールを意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇い止めや契約期間中の解雇等を行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。

【詳しい情報や相談先】
•改正事項の詳細を知りたい→ 厚生労働省ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp/index.html
•無期転換の取り組み事例や参考となる資料がほしい→ 無期転換ポータルサイト https://muki.mhlw.go.jp/
•今回の制度改正や労働条件明示、労働契約に関する民事上の紛争について
都道府県労働局/監督課、雇用環境・均等部(室)、全国の労働基準監督署 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/soudan/index.html




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html

「非正規雇用労働者の賃金引上げに向けた同一労働同一賃金の取組強化期間」を設定

 令和5年3月に開催された政労使意見交換会において、賃金引上げの流れを中小企業・小規模事業者の労働者及び非正規雇用労働者に波及させられるよう、厚生労働大臣から労使団体に対し、企業が賃金引上げに取り組む際の同一労働同一賃金の観点を踏まえた対応等について、傘下企業等への働きかけを依頼しています。こうしたことも踏まえ、厚生労働省では、本年3月15日から5月31日までを取組強化期間として設定し、同一労働同一賃金の遵守の徹底に向けた取組を集中的に行うとのことです。

3月15日付で、経済団体・各種業界団体・自治体等に、賃金引上げの流れを中小企業・小規模事業者の労働者及び非正規雇用労働者に波及させるための協力依頼の文書が発出されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/001073423.pdf

また、特に非正規雇用労働者が多い業界の団体等に対し、厚生労働省から直接働きかけを実施するとのことです。さらに、同一労働同一賃金に関するパート・有期雇用労働法及び労働者派遣法の履行確保のための取組の強化を行うとともに、併せて中小企業等への各種支援の充実や広報活動を強化し、賃金引上げに取り組む中小企業等を支援するとのことです。

各企業は本取組の趣旨を理解したうえで、適切な対応に協力するよう呼び掛けています。


■非正規雇用労働者の賃金引上げに向けた同一労働同一賃金の取組強化期間(3/15~5/31)について
春闘に合わせ、賃金引上げの流れを中小企業・小規模事業者の労働者及び非正規雇用労働者に波及させるため、3月15日~5月31日を強化期間として設定し、各種取組を集中的に実施

【強化期間における取組】
1.春闘の賃金引上げの流れを中小企業・小規模事業者の労働者及び非正規雇用労働者に波及させるための企業への協力依頼

①企業が賃金引上げに取り組む際に非正規雇用労働者について同一労働同一賃金の観点を踏まえた対応を行うこと
②中小企業・小規模事業者の賃金引上げの参考となる情報サイト「賃金引上げ特設ページ」や各種支援策の活用について、経済団体及び各種業界団体に協力依頼(3月15日付文書発出)

都道府県知事等の自治体の首長に対して、地域企業への同様の働きかけの協力依頼(3月15日付文書発出)

2.業界団体等に対する直接要請
【特に非正規雇用労働者が多い業界の団体や中小企業団体に対し、厚生労働省が直接、傘下企業等への働きかけを要請】
【全国各地で、都道府県労働局長が管内の経済団体等に直接、傘下企業等への働きかけを要請】

3.同一労働同一賃金の遵守の徹底に向けた各種取組の強化
【パート・有期雇用労働法及び労働者派遣法の履行確保の強化】
・昨年12月から開始した労働基準監督署都道府県労働局が連携した同一労働同一賃金の徹底に向けた取組について3月から本格実施(都道府県労働局による報告徴収等は、4月から本格実施)

【各種支援策の充実】
働き方改革推進支援センターにおいて、同一労働同一賃金に関するコンサルティング等による支援の強化
・キャリアアップ助成金や業務改善助成金をはじめとした賃金引上げに向けた各種支援策の活用促進、厚生労働省SNSでの発信などの広報活動の強化




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30341.html

 

 

 

 

無期転換ルール及び労働契約関係の明確化、裁量労働制の見直しに関する改正省令等について諮問・答申

 厚生労働省から、令和5年2月14日に開催された「第188回労働政策審議会労働条件分科会」の資料が公表されました。今回の議題には、「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱」等についての諮問が含まれており、同日、労働政策審議会から妥当との答申もあったようです。内容は、無期転換ルール及び労働契約関係の明確化、裁量労働制の見直し(専門業務型裁量労働制の本人同意の追加など)です。

今回、答申があった省令・告示の改正案はこちらです。

労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱

1.改正の概要
労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)に以下の内容を追加することとする。

(1)無期転換ルール及び労働契約関係の明確化について
労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限並びに就業場所・業務の変更の範囲を追加する。

○無期転換申込権が発生する契約更新時における法第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を追加する。

○無期転換後の労働条件を明示する際には、労働契約の締結時に書面の交付等の方法により明示することとされている事項については、書面の交付等の方法により明示することとする。

(2)裁量労働制について
(対象労働者の要件)
○企画業務型裁量労働制(以下「企画型」という。)について、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことを決議事項に追加することとする。

(本人同意・同意の撤回)
○専門業務型裁量労働制(以下「専門型」という。)について、本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを協定事項に追加することとする。

○専門型及び企画型について、同意の撤回の手続を協定事項及び決議事項に追加することとする。

(労使委員会の実効性向上)
○企画型について、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容について説明することに関する事項を労使委員会の運営規程に追加することとする。

○企画型について、労使委員会が制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うことに関する事項を労使委員会の運営規程に追加することとする。

○労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定めることとするとともに、労使委員会の労働者代表委員の選出手続の適正化を図ることとする。

○労使委員会の労働者代表委員が労使委員会の決議等に関する事務を円滑に遂行することができるよう、使用者は必要な配慮を行わなければならないものとする。(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則(平成4年労働省令第26号)における労働時間等設定改善委員会においても同様の改正を行うこととする。)

(行政の関与・記録の保存等)
○6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回及びその後1年以内ごとに1回とすることとする。

○専門型・企画型ともに、健康・福祉確保措置の実施状況等に関する労働者ごとの記録を作成し、保存することとする。

○その他所要の改正を行う。

2.施行期日
施行期日:令和6年4月1日(予定)


以下の告示(基準・指針)の改正は、これに連動したものです。

■有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件案要綱
概要:https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001057849.pdf

労働基準法第三十八条の四第一項の規定により同項第一号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示案要綱
概要:https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001057851.pdf

厚生労働省では、この答申を踏まえ、これらの省令等の改正作業を進めていくということです。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31101.html

「第14次労働災害防止計画」について労働政策審議会が答申

 厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会は、厚生労働大臣に対し、「第14次労働災害防止計画」について答申を行い、これを公表しています。これは、昨年9月から同審議会の安全衛生分科会において審議を重ねてきた結果に基づくものです。労働災害防止計画は、労働災害の防止のために、国、事業者、労働者等の関係者が重点的に取り組む事項を定めたものです。第14次計画は、2023年度を初年度とする5年間を対象としたもので、計画の目標と重点対策は以下のとおりとなります。

<計画の目標>
重点事項における取組の進捗状況を確認する指標(アウトプット指標)を設定し、アウトカム(達成目標)を定める。
●労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進
アウトプット指標
・転倒災害対策(ハード・ソフトの両面からの対策)に取り組む事業場の割合を50%以上とする。
・卸売業・小売業/医療・福祉の事業場における正社員以外の労働者への安全衛生教育の実施率を2027年までに80%以上とする。
・介護・看護作業において、ノーリフトケアを導入している事業場の割合を2023年と比較して2027年までに増加させる。

アウトカム指標
・増加が見込まれる転倒の年齢層別死傷年千人率を2022年と比較して2027年までに男女ともその増加に歯止めをかける。
・転倒による平均休業見込日数を2027年までに40日以下とする。
・増加が見込まれる社会福祉施設における腰痛の死傷年千人率を2022年と比較して2027年までに減少させる。

【千人死傷率とは?】
年千人率は、1年間の労働者1,000人当たりに発生した死傷者数の割合を示すものです。

●高年齢労働者の労働災害防止対策の推進
アウトプット指標
・「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月16日付け基安発0316第1号。以下「エイジフレンドリーガイドライン」という。)に基づく高年齢労働者の安全衛生確保の取組(安全衛生管理体制の確立、職場環境の改善等)を実施する事業場の割合を2027年までに50%以上とする。

アウトカム指標
・増加が見込まれる60歳代以上の死傷年千人率を2022年と比較して2027年までに男女ともその増加に歯止めをかける。

●労働者の健康確保対策の推進
アウトプット指標
・企業における年次有給休暇の取得率を2025年までに70%以上とする。
・勤務間インターバル制度を導入している企業の割合を2025年までに15%以上とする。
メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を2027年までに80%以上とする。
・使用する労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027年までに50%以上とする。
・各事業場において必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合を2027年までに80%以上とする。

アウトカム指標
・週労働時間40時間以上である雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を2025年までに5%以下とする。
・自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者の割合を2027年までに50%未満とする。

上記のアウトカム指標の達成を目指した場合、労働災害全体としては、少なくとも以下のとおりの結果が期待される。
・死亡災害については、2022年と比較して2027年までに5%以上減少する。
・死傷災害については、2021年までの増加傾向に歯止めをかけ、死傷者数については、2022年と比較して2027年までに減少に転ずる。

<計画の重点対策>
次の8つの重点を定め対策を推進する。
●自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】
・安全衛生対策や産業保健活動の意義を理解し、必要な安全衛生管理体制を確保した上で、事業場全体として主体的に労働者の安全と健康保持増進のための活動に取り組む。
・国や労働災害防止団体が行う労働安全防止対策に係る支援及び労働安全衛生コンサルタントを活用し、自社の安全衛生活動を推進する。

●労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・転倒災害は、加齢による骨密度の低下が顕著な中高年齢の女性を始めとして、極めて高い発生率となっており、対策を講ずべきリスクであることを認識し、その取組を進める。
・筋力等を維持し転倒を予防するため、運動プログラムの導入及び労働者のスポーツの習慣化を推進する。
・非正規雇用労働者も含めた全ての労働者への雇入時等における安全衛生教育の実施を徹底する。
・「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日付け基発0618第1号。以下「職場における腰痛予防対策指針」という。)を参考に、作業態様に応じた腰痛予防対策に取り組む。

●高年齢労働者の労働災害防止対策の推進
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・「エイジフレンドリーガイドライン」に基づき、高年齢労働者の就労状況等を踏まえた安全衛生管理体制の確立、職場環境の改善等の取組を進める。
・転倒災害が、対策を講ずべきリスクであることを認識し、その取組を進める。
・健康診断情報の電磁的な保存・管理や保険者へのデータ提供を行い、プライバシー等に配慮しつつ、保険者と連携して、年齢を問わず、労働者の疾病予防、健康づくりなどのコラボヘルスに取り組む。

●多様な働き方への対応や外国人労働者等の労働災害防止対策の推進
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・コロナ禍におけるテレワークの拡大等を受けて、自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルス対策や作業環境整備の留意点等を示した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月改定。以下「テレワークガイドライン」という。)や労働者の健康確保に必要な措置等を示した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月最終改定。以下「副業・兼業ガイドライン」という。)に基づき、労働者の安全と健康の確保に取り組む。
外国人労働者に対し、安全衛生教育マニュアルを活用するなどによる安全衛生教育の実施や健康管理に取り組む。

●個人事業者等に対する安全衛生対策の推進
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・労働者ではない個人事業者等に対する安全衛生対策については、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」における議論等を通じて、個人事業者等に関する業務上の災害の実態の把握に関すること、個人事業者自らによる安全衛生確保措置に関すること、注文者等による保護措置のあり方等において、事業者が取り組むべき必要な対応について検討する。

●業種別の労働災害防止対策の推進
ア:陸上貨物運送事業対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・「荷役作業における安全ガイドライン」に基づく安全衛生管理体制の確立、墜落・転落災害や転倒災害等の防止措置、保護帽等の着用、安全衛生教育の実施等、荷主も含めた荷役作業における安全対策に取り組む。
・「職場における腰痛予防対策指針」を参考に、作業態様に応じた腰痛予防対策に取り組む。

イ:建設業対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・墜落・転落のおそれのある作業について、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所への囲い、手すり等の設置、墜落制止用器具の確実な使用、はしご・脚立等の安全な使用の徹底等、高所からの墜落・転落災害の防止に取り組む。あわせて、墜落・転落災害の防止に関するリスクアセスメントに取り組む。
・労働者の熱中症や騒音障害を防止するため、「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月20日付け基発0420第3号。以下「職場における熱中症予防基本対策要綱」という。)に基づく暑さ指数の把握とその値に応じた熱中症予防対策の適切な実施や「騒音障害防止のためのガイドライン」(平成4年10月1日付け基発第546号。以下「騒音障害防止のためのガイドライン」という。)に基づく作業環境測定、健康診断、労働衛生教育等の健康障害防止対策に取り組む。

ウ:製造業対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・はさまれ・巻き込まれなどによる労働災害のおそれがある危険性の高い機械等については、製造者(メーカー)、使用者(ユーザー)それぞれにおいてリスクアセスメントを実施し、労働災害の防止を図ることが重要であることから、「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年7月31日付け基発第0731001号)に基づき、使用者においてリスクアセスメントが適切に実施できるよう、製造者は、製造時のリスクアセスメントを実施しても残留するリスク情報の機械等の使用者への確実な提供に取り組む。
・機能安全の推進により機械等の安全水準を向上させ、合理的な代替措置により安全対策を推進する。

エ:林業対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・伐木等作業の安全ガイドライン、「林業の作業現場における緊急連絡体制の整備等のためのガイドライン」(平成6年7月18日付け基発第461号の3。以下「林業の緊急連絡体制整備ガイドライン」という。)等について労働者への周知や理解の促進を図るとともに、これらに基づき、安全な伐倒方法やかかり木処理の方法、保護具の着用、緊急時における連絡体制等の整備や周知、通信機器の配備、教育訓練等の安全対策を確実に実施する。

●労働者の健康確保対策の推進
ア:メンタルヘルス対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

ストレスチェックの実施のみにとどまらず、ストレスチェック結果を基に集団分析を行い、その集団分析を活用した職場環境の改善まで行うことで、メンタルヘルス不調の予防を強化する。
・「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)に基づく取組をはじめ職場におけるハラスメント防止対策に取り組む。

イ:過重労働対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置に基づき、次の措置を行う。
①時間外・休日労働時間の削減、労働時間の状況の把握、健康確保措置等
年次有給休暇の確実な取得の促進
③勤務間インターバル制度の導入など労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)による労働時間等の設定の改善
長時間労働による医師の面接指導の対象となる労働者に対して、医師による面接指導や保健師等の産業保健スタッフによる相談支援を受けるよう勧奨する。

ウ:産業保健活動の推進
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・事業場ごとの状況に応じた産業保健活動を行うために必要な産業保健スタッフを確保し、労働者に対して必要な産業保健サービスを提供するとともに、産業保健スタッフが必要な研修等が受けられるよう体制を整備する。
・治療と仕事の両立支援に関して、支援を必要とする労働者が支援を受けられるように、労働者や管理監督者等に対する研修等の環境整備に取り組む。
・事業者及び労働者は、産業医保健師に加えて医療機関や支援機関等の両立支援コーディネーターを積極的に活用し、治療と仕事の両立の円滑な支援を図る。

●化学物質等による健康障害防止対策の推進
ア:化学物質による健康障害防止対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・化学物質を製造、取扱い、又は譲渡提供する事業者における化学物質管理者の選任及び外部専門人材の活用による次の2つの事項を的確に実施する。
①化学物質を製造する事業者は、製造時等のリスクアセスメント等の実施及びその結果に基づく自律的なばく露低減措置の実施、並びに譲渡提供時のラベル表示・SDSを交付する。SDSの交付にあたっては、必要な保護具の種類も含め「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」を記載する。
②化学物質を取り扱う事業者は、入手したSDS等に基づくリスクアセスメント等の実施及びその結果に基づく自律的なばく露低減措置を実施する。

イ:石綿、粉塵による健康障害防止対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・適正な事前調査のため、建築物石綿含有建材調査者講習修了者等の石綿事前調査に係る専門性を持つ者による事前調査を確実に実施する。
石綿事前調査結果報告システムを用いた事前調査結果の的確な報告及び事前調査結果に基づく適切な石綿ばく露防止対策を実施する。
・解体・改修工事発注者による、適正な石綿ばく露防止対策に必要な情報提供・費用等の配慮について、周知を図る。
・粉塵ばく露作業に伴う労働者の健康障害を防止するため、粉塵障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)その他関係法令の遵守のみならず、第10次粉塵障害防止総合対策に基づき、粉塵による健康障害を防止するための自主的取組を推進する。
・トンネル工事を施工する事業者は、所属する事業場が転々と変わるトンネル工事に従事する労働者に対する健康管理を行いやすくするため、「ずい道等建設労働者健康管理システム」に、労働者のじん肺関係の健康情報、有害業務従事歴等を登録する。

ウ:熱中症、騒音による健康障害防止対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

・「職場における熱中症予防基本対策要綱」を踏まえ、暑さ指数の把握とその値に応じた熱中症予防対策を適切に実施する。あわせて、作業を管理する者及び労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うほか、衛生管理者などを中心に事業場としての管理体制を整え、発症時・緊急時の措置を確認し、周知する。その他、熱中症予防に効果的な機器・用品の活用も検討する。
・労働者は、熱中症を予防するために、日常の健康管理を意識し、暑熱順化を行ってから作業を行う。あわせて、作業中に定期的に水分・塩分を摂取するほか、異変を感じた際には躊躇することなく周囲の労働者や管理者に申し出る。
・労働者の騒音障害を防止するために、「騒音障害防止のためのガイドライン」に基づく作業環境測定、健康診断、労働衛生教育等に取り組む。

エ:電離放射線による健康障害防止対策
【労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと】

東京電力福島第一原子力発電所廃炉に向けた作業(以下「廃炉作業」という。)や帰還困難区域等で行われる除染等における作業に従事する労働者に対する安全衛生管理、被ばく線量管理、被ばく低減対策、健康管理等を徹底する。
東京電力福島第一原子力発電所での緊急作業に従事した労働者に対して、「原子力施設等における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」(平成27年8月31日健康の保持増進のための指針公示第6号)に基づく健康管理を実施する。
・医療従事者の被ばく線量管理及び被ばく低減対策の取組を推進するとともに、被ばく線量の測定結果の記録等の保存について管理を徹底する。

厚生労働省では、この答申を踏まえて計画を策定し、目標の達成に向けた取組を進めていくということです。




詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31063.html

障害者雇用率を段階的に引き上げる方針-民間企業では令和8年度に「2.7%」へ

 厚生労働省から、令和5年1月18日開催の「第123回労働政策審議会障害者雇用分科会」の資料が公表されています。今回の議題に、「障害者雇用率について(案)」が含まれており人事担当者は確認しておくべき内容となっています。前提として、障害者雇用促進法に基づき、労働者(失業者を含む)に対する対象障害者である労働者(失業者を含む)の割合を基準とし、少なくとも5年毎に、その割合の推移を勘案して設定することとされています。さらに現行の雇用率は、平成30年4月からの雇用率として設定されており、令和5年度からの雇用率を設定する必要があることとなっています。


■令和5年度からの障害者雇用率の設定等について
1.新たな雇用率の設定について
・令和5年度からの障害者雇用率は、2.7%とする。
ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることとする。

・国及び地方公共団体等については、3.0%(教育委員会は2.9%)とする。
段階的な引上げに係る対応は民間事業主と同様とする。

2.除外率の引下げ時期について
・除外率を10ポイント引き下げる時期については、昨年6月にとりまとめられた障害者雇用分科会の意見書も踏まえ、雇用率の引上げの施行と重ならないよう、令和7年4月とする。


3.事業主向けの支援について

・先の臨時国会で成立した障害者雇用促進法に基づき、令和6年4月から、

・雇入れに必要な一連の雇用管理に対する相談援助の助成金が創設される予定。
特に、中小企業や除外率設定業種に対しては、助成金の上乗せ等を行うことや既存助成金の拡充により、雇用率の引上げや除外率の引下げの影響を受ける事業主への集中的な支援を行うことを通じて雇入れや定着支援の充実等を検討。
(※令和6年度からの制度の詳細は、次回以降の分科会で議論予定。)

・あわせて、特に短い労働時間(週10~20時間)で働く重度の身体障害者知的障害者精神障害者の実雇用率への算定が可能となる。

・この他、
①昨年9月に、都道府県労働局に対し、雇用率未達成企業の増加や、除外率設定業種における雇用障害者の不足の増加が見込まれることから、ノウハウが不足している障害者雇用ゼロ企業等に対し、ハローワークが、地域障害者職業センター等の関係機関と連携し、採用の準備段階から採用後の職場定着まで一貫したチーム支援等を実施することなど、障害者の雇入れ支援等の一層の強化を図ることを指示するとともに、

②令和5年度予算案では、就職支援コーディネーター(ハローワークにおいて企業に対するチーム支援に取り組む者)の増員、障害者の雇入れや定着支援を行う障害者就業・生活支援センターの人材確保や支援力の強化を図るため、就業支援担当者の処遇の改善を盛り込んでいる。

障害者雇用率の検討に要する数値の調査結果について
身体障害者
1.常用雇用身体障害者数39.4万人
2.常用雇用短時間身体障害者数3.5万人
3.失業身体障害者数9.2万人
知的障害者
4.常用雇用知的障害者数16.5万人
5.常用雇用短時間知的障害者数3.4万人
6.失業知的障害者数4.3万人
精神障害者
7.常用雇用精神障害者数9.4万人
8.常用雇用短時間精神障害者数3.3万人
9.失業精神障害者数12.9万人
厚生労働省職業安定局調べ

障害者雇用納付金及び障害者雇用調整金の額の設定の基準となる数値の算定について
○単位調整額の算出根拠の概要
障害者雇用納付金(以下「納付金」という。)に係る調整基礎額については、基準雇用率に達するまで身体障害者知的障害者又は精神障害者(以下「対象障害者」という)を雇用するものとした場合(①)に、また、障害者雇用調整金(以下「調整金」という。)に係る単位調整額については、基準雇用率を超えて対象障害者を雇用した場合(②)に、それぞれ対象障害者1人につき通常必要とされる1か月当たりの特別費用(対象障害者を雇用するために特別に必要とされる費用)の額の平均額を基準として定める旨規定されている。

実態調査に基づき、平均的規模の企業をモデルとして①及び②の特別費用を算出すると、調整基礎額(納付金)及び単位調整額(調整金)は次のとおりである。

*調整基礎額(納付金)=49,494円≒50,000円
*単位調整額(調整金)=29,532円≒29,000円

■報奨金の額の設定の基準となる数値の算定について
○報奨金額の算定の根拠
納付金制度に係る報奨金額については、調整金に係る単位調整額以下の額で厚生労働省令で定めることとされている。(法附則第4条第3項)実態調査に基づき、雇用率の達成、未達成に関係なく、現在の報奨金の支給基準を満たす企業における身体障害者知的障害者又は精神障害者1人の雇用に伴う1か月当たりの特別費用額の平均を求めると44,279円となる。
次に、調整金と報奨金の整合性をとる必要があることから、調整金を決定する際に基準となるべき額と調整金の単価の割合を計算し、また、納付金を納めていない企業で障害者を多数雇用している企業の特別費用の一部の負担の調整を図るという観点からこの額を2で除した額としている。
したがって、報奨金額は次のとおりである。
*報奨金額

日本では企業に対して障害者雇用が義務付けられていますので、企業経営者の方や人事担当者の方は法律をきちんと理解し、義務達成のために様々な対応をする必要があります。障害者の雇用や雇用管理のための施設整備を行う事業主は、国からの助成金を受け取ることができますので、活用していくことをお勧めいたします。





詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30341.html