データ利活用促進に向けた企業における管理・契約等の実態調査について

 

データの収集・活用や関連技術の開発は、企業の競争力の源泉であり、その重要性がますます高まっていると指摘されていますが、経済産業省は、データ利活用促進に向け、企業における管理・契約等の実態調査を実施し、この程、その結果を公表しました。

■データ利活用促進に向けた企業における管理・契約等の実態調査の概要

◎調査内容
【アンケート調査】
・送付先:東証一部上場企業 2019社
・回答企業:304社(15.1%)
・実施期間:2016年10月17日~11月11日
・調査内容:事業内容、事業におけるデータ利活用の状況(現状・望ましい姿)、データ利活用を今後推進していく上での課題や制約、データ利活用をしていく上での政策的な課題・要請 ほか

【ヒアリング調査】
・対象企業:31社
・調査内容 :アンケートの調査内容の具体的な事例、ニーズ ほか

◎主な調査結果(アンケート調査結果)
(1)企業間におけるデータのやりとりの実態(現状/望ましい姿)
ア.社外からのデータ取得について
・現状では、社外からのデータ取得を行っている企業⇒42.7%(122社)
・将来的に、社外からのデータ取得を行うことが望ましいと考える企業⇒61.5%(176社

イ.社外へのデータ提供について
・現状では、全部/一部を提供している企業⇒24.0%(69社)
・将来的に、全部/一部を提供することが望ましいと考える企業⇒32.3%(93社)

(2)不正利用への対策として実施すべき法整備
・損害賠償基準の明確化を求める企業⇒69.1%(197社)
・罰金・懲役等といった罰則強化を求める企業⇒66.0%(186社)
・差止請求による被害の最小化⇒60.0%(171社)
・データを不正取得したとしても個人・企業にアプローチできないようにする制度を求める企業⇒44.9%(128社)
(※)第三者による不正利用に対しては、厳罰化や損害賠償などによる抑止力を高めることと共に、自社や顧客に対する被害の拡大を止めるため差止めなどを求める声が多い。

(3)データ利活用を推進していく上での課題・政策要請<制度関連の回答>
・基本的にはデータは顧客に帰属するものと考えるが、一方で当社が時間・労力を費やして取得・蓄積・分析しているため、一部は当社に帰属し、他社が不正に取得・利用した際に差し止め請求ができるよう、法的な整備をして欲しい。(製造業)

・当社としても苦労して機器を開発・製造し、取得・蓄積・分析したデータは、著作権や営業秘密に該当するほど重要であると認識している。

・ローデータを保護することは難しいかもしれないが、当社で分析したデータについては他社が不正利用した場合に差し止め請求ができるような法的な裏付けが欲しい。

・利害調整(権利、紛争の事後解決等)の機能を果たすルールがあれば企業はデータ利活用に取り組みやすくなり、その拠り所となる法律が必要である。

・日本ではデータ利活用の相場感(データの利用範囲等)が形成されていないため、データ利活用に積極的ではないと思われる。ただし、相場感を形成するには一定のルールが必要と考える。

・わが国でデータ利活用を推進する上では、当社のような機器メーカが苦労して蓄積したデータについて営業秘密や(著作性はないが)知財としての保護と、不正利用時に賠償・差し止めを可能とする法的な整備が必要である。(製造業)

・営業秘密は個別企業ごとに秘密保持契約を結ぶが、限られた業種内で多数の企業と秘密保持契約を結ぶと実質的には秘密は守られなくなる可能性がある。

【参考】
類型1:顧客による自社商品の利用を通じて発生したデータを、自社で取得して利活用
<データ利活用の構造>
・顧客が自社商品(機械・機器、アプリケーション等)を利用することに伴い発生したデータを取得・蓄積し、分析結果を商品の改良や新商品開発に活用する。
・データの分析結果を活用して改良された商品や開発した新商品は、パッケージ化されたものとして顧客へ提供される。蓄積・分析過程において顧客へ個別にはデータ共有・還元は行わない。
<契約・管理の実態>
・パッケージ化した商品を顧客に提供し、データ利活用に際してはプライバシーポリシーや約款・規約で顧客から同意を得る。
<課題・制約>
・個人顧客からデータを取得する事業を展開している企業では、個人情報漏えい発生のレピュテーションリスクが懸念され、データ利活用推進における制約として捉えている。

類型2:複数企業等がデータを持ち寄りビッグデータ化し、各社での利用やオープンデータとして公開
<データ利活用の構造>
・複数企業等が、各社で取得した特定のデータを持ち寄り、データベースを構築し、参加者間で共有する。
・データベースから、各社が自社商品の改良・新商品開発にと必要な項目を抽出して利用する。データベースそのものをオープンデータとして公開する場合もある。
・各社が提供するデータは、各社の営業秘密に該当しない情報に限定。提供するデータは、業界における安全基準となるベンチマークデータなど、非競争領域のものであり共有・利活用することにより参加者の互いの利益となるデータ。

<契約・管理の実態>
・データ発生元(各社の顧客)からのデータの取得の際の契約と、取得したデータを企業間で共有する際の契約との2つが存在。

<課題・制約>
・広範囲でのデータ共有を実現する上でコンソーシアム形成が考えられるが、一企業での推進は困難であり、政策的な方針提示や関係省庁・外郭団体等による主導が必要。

類型3:特定のデータを大量に蓄積し、他業種の企業も含めた他社に提供
<データ利活用の構造>
・顧客が自社商品(機械・機器、アプリケーション等)を利用することに伴い発生したデータを大量に取得・蓄積し、分析・匿名加工したデータを、各データを必要とするデータ利用企業に対して提供する。
・データ利用企業への提供に際しては、有償/無償での提供がある。
・また、データ提供を受けた事業者が、さらにデータに加工(整理・抽出など)を施し、第三者へ提供することもある。

<契約・管理の実態>
・データ発生元(各社の顧客)からのデータの取得の際の契約と、取得したデータを企業間で共有する際の契約との2つが存在。

<課題・制約>
・自社が蓄積・匿名加工したデータベースが第三者に不正利用された場合の法的な整備が必要と思料される。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[経済産業省]

http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170420003/20170420003.html