「仕事と生活の調和のための時間外労働規制検討会」の論点整理を公表

  厚生労働省は、「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」について、論点整理をとりまとめ公表しています。本検討会では、36協定における時間外労働規制の在り方をはじめ、長時間労働の是正に向けた政府の検討に資するよう、わが国における時間外労働の実態や課題の把握を中心に検討を進めてきたものです。

■仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会(論点の整理)概要
1.総論
・人口減少の中でわが国の成長を確保していくためには、誰もが働きやすい環境を整備することが必要であり、そのためには、必要のない時間外労働をなくし、効率的でムダのない働き方に変えていくことが必要である。
長時間労働を前提とする企業文化を変え、企業の業務プロセスの見直しや意識改革を進めることが必要である。
・現行法の遵守の徹底を求めるとともに、同業他社等との競争が厳しい中、各企業の自主的な取組に任せるだけでは限界があることから、36協定における時間外労働規制の在り方について法改正を検討する必要がある。

2.マネジメント、業務プロセス、人事評価等の改革
・全社的に長時間労働の是正を図るためには、経営者自らが率先して改革を推し進める必要がある。
・時間外労働が生じる要因としては、業務量の過多や業務の繁閑が多く挙げられるが、マネジメント能力の低さ、誰も読まない議事録の作成や過度に凝った資料の作成などに代表される過剰品質を求めるマネジメント、職場の意識改革不足も指摘されている。
・より短時間で効率的に働いた人が評価されるよう、時間当たり労働生産性を人事評価の指標として盛り込むなど、企業の人事制度改革を促すべきである。その際には、効率的に働くことで時間外労働を削減した場合、削減によって浮いた原資を労働者にどのように還元するか等、各企業において工夫が求められる。

3.企業のコンプライアンスと法の執行
・36協定を締結していない理由として、制度自体の不知、協定締結の失念等が挙げられるなど、労働時間規制が浸透していない実態があり、改善を図る必要がある。労働者の健康確保を図るためにも、まず企業自らが法令遵守にしっかり取り組まなければならない。

4.規制の在り方について~(1)時間外労働の限度
・36協定の締結状況を見ると、通常の延長時間はほぼ100%の企業で限度基準告示(月45時間、年360時間等)の範囲内に収まっている一方で、一部、特別条項がある場合の延長時間が月100時間を超えるものも見受けられ、長時間労働の歯止めとして十分機能していない。
・36協定の時間外労働規制のあり方を検討するに当たっては、労使協定で定める範囲内で、割増賃金を払えば上限なく時間外労働が可能となる現在の仕組みを改め、一定期間内の総労働時間の枠を定め、その枠の中で健康を確保しつつ効率的に働くことを可能とする制度への転換を指向すべきである。
・1日単位の休息期間を確保するインターバル規制は、睡眠時間の確保や疲労蓄積を防ぐ観点から重要な考え方であり、企業自らがこれを導入することを促していくべきである。

5.規制の在り方について~(2)労使の役割
・36協定は、国が定める限度基準の下、それぞれの現場に合った労働時間数の設定を労使の調整に委ねる仕組みとなっているが、この労使の調整手続が十分に機能していない実態があり、改善する必要がある。
・労働時間の上限設定は、これまでの働き方を大きく変えるものになるので、各企業、各職場で長時間労働の是正、働きやすい職場環境づくり等に向けて労使が率直に意見交換し、具体的な改善策に取り組むことが重要。

6.規制の在り方について~(3)情報の公開
・法違反に対する公表制度は強化するとともに、長時間労働の是正やワークライフバランスの改善及びその継続に積極的に取り組む企業が、労働市場、商品市場、株式証券市場等において積極的に評価される環境を作ることが求められる。

7.下請け等の取引慣行への対応、意識改革、その他
・中小企業における長時間労働については、重層下請構造の下での、急な仕様の変更や短納期発注等が背景にあることから、発注元や親事業者を含めた業界全体としての取引環境の改善が必要であり、政府はそのような業界全体の問題を協議する場の設定に努め、業界としてのコンセンサス形成を図るべきである。
・過当競争が低価格での過剰サービスを生み、長時間労働を引き起こしている。提供したサービスの価値に見合った対価が支払われるよう、商慣行の在り方について、改善の手法を検討することも必要である。
・過当競争の中で、顧客の要望に対し、際限なくサービスを提供してきた結果、“翌日配送”や“24時間対応”が消費者にとって当たり前のものになってしまい、長時間労働を招いている実態もある。過度のサービス要求を控えることが、長時間労働の是正につながり、働く人の健康と幸せにつながることを喚起し、国民全体の意識改革を促すことも重要である。


詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000150188.html