2013.09.09 今後の労働者派遣制度に関する報告書について|日本・ハンガリー社会保障協定の署名について

今後の労働者派遣制度に関する報告書について

  厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」は、これまでの検討を踏まえて報告書を公表しました。

この中で、期間制限のない政令26業務の廃止を検討事項にあげ、業務ではなく個人単位で同一の派遣先への派遣期間の上限を設定すべきであるとしており、今後は、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、労使を交えた更なる検討が加えられます。

■報告書の概要

◎登録型派遣・製造業務派遣の在り方

・登録型派遣は労働力の需給調整の仕組みとして有効に機能しており、仮に禁止した場合、経済活動や雇用への影響が懸念される。

・登録型派遣については、雇用の不安定性への対応が必要であり、後述の雇用安定措置を講じていくことが考えられる。

・製造業務派遣について指摘されている問題は、製造業務の有期雇用労働者一般に関係する事項であり、労働者派遣制度の中で対応すべき理由に乏しい。雇用の不安定性については、登録型派遣をめぐる雇用の不安定性の議論の中で検討すべき。

◎特定労働者派遣事業の在り方

・特定労働者派遣事業には有期雇用を反復更新している者も含まれており、それらの者の雇用が必ずしも安定していない状況。

・「常時雇用される」を「期間の定めのない」ものと再整理することで、特定労働者派遣事業はすべての派遣労働者を無期雇用する派遣元に限定することが適当。

◎期間制限の在り方等

(1)26 業務という区分に基づく規制の在り方について

・「専門性」は時代とともに変化するため、判断基準を明確に定義するのは困難。

・26 業務の該当の有無をめぐり関係者間で解釈の違いが生じるケースが発生。

・現行の26業務という区分に基づく規制の廃止を含め、労働政策審議会で議論していくことが適当。

(2)現行の常用代替防止策の課題

・常用代替防止は派遣労働者の保護や雇用の安定と必ずしも両立しない。

正規雇用労働者と同様の待遇の派遣労働者まで一律に抑制の対象とすることは適当でない。

・期間制限の存在が派遣労働者の雇用の不安定性の一因に。

派遣労働者の所属する単位を変更すれば、同一の派遣労働者の受入れを長期間続けることができる仕組みとなっている。

(3)常用代替防止の再構成

・有期雇用派遣は、間接雇用かつ有期雇用であるため、派遣労働者の雇用の不安定性、キャリアアップの機会が乏しい、派遣先での望ましくない派遣利用の可能性、拡大しやすい性質といった特徴があることから、一定の制約を設け、無限定な拡大を抑制していくことが望ましい。

・常用代替防止の考え方は、今後、対象を有期雇用派遣に再整理した上で、個人が特定の仕事に有期雇用派遣として固定されない、また労働市場全体で有期雇用派遣が無限定に拡大しないという個人レベルの常用代替防止派遣先の常用労働者が有期雇用派遣に代替されないことという派遣先レベルの常用代替防止の2つを組み合わせた考え方に再構成。

・無期雇用派遣は常用代替防止の対象から外すが、無期雇用の労働者にふさわしい良好な雇用の質の確保を図っていくことが望まれる。

(4)今後の制度について

・今後の常用代替防止のための制度については、有期雇用派遣を対象とし、

ア.労働者個人単位で同一の派遣先への派遣期間の上限を設定する

イ.アにより派遣労働者を交代することで有期雇用派遣を続けることが可能となる点に対しては、派遣先の労使がチェックする仕組みを考えるとすることを中心に検討していくことが望まれる。

・派遣の継続性については、判断基準となる範囲の設定によって様々な案が考えられる。

・労使のチェックの仕組みについても、様々な案が考えられる。

・個人単位の派遣期間の上限に達した有期雇用派遣労働者には、派遣元が雇用の安定のための措置を講じることが適当。

【今後の制度のイメージ】 例えば、以下を主な構成要素とする制度が考えられる。

ア.個人レベルでの派遣期間の制限

・・・同一の有期雇用派遣労働者について、派遣先の組織・業務単位における受入期間に上限を設ける。

(組織・業務単位の範囲の大きさにより、多くの選択肢)

イ.派遣期間の上限に達した者への雇用安定措置

・・・派遣元は、有期雇用派遣労働者が受入期間の上限に達する場合、希望を聴取し、派遣先への直接雇用の申入れ、新たな派遣就業先の提供、派遣元での無期雇用化等のいずれかの措置を講じる。

ウ.派遣先レベルでの派遣期間の制限(派遣先の労使のチェック)

・・・継続的な有期雇用派遣の受入れが上限年数を超す場合、派遣先の労使の会議等の判断により、上限年数を超えた継続的受入れ等の可否を決定する。

・有期雇用派遣の受入期間の上限については、個人単位、派遣先単位共に3年とすることを中心に検討することが考えられる。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000016029.html

2013.09.09

日本・ハンガリー社会保障協定の署名について

 8月23日、日本政府とハンガリー政府との間で、社会保険料の二重払い等の問題解消をするための「社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定」の署名が行われました。

わが国は、これまで14ヶ国との間で社会保障協定を発効させており、他の諸国とも順次交渉を進めています。

■日本・ハンガリー社会保障協定の概要

現在、日本の企業等からハンガリーに一時的に派遣される被用者等(企業駐在員など)は、原則として日・ハンガリー両国の年金制度及び医療保険制度へ加入することとなるため、社会保険料の二重払いの問題が生じています。

日本・ハンガリー社会保障協定は、この問題を解決することを目的としており、この協定が効力を生ずれば、5年以内の期間を予定して派遣される被用者等は、原則として、派遣元国の年金制度及び医療保険制度にのみ加入することとなります(5年を超える場合は、原則として派遣先国の制度のみに加入)。

また、両国での保険期間を通算してそれぞれの国における年金の受給権を確立できることとなります。

今後、この協定の締結により、企業及び駐在員等の負担が軽減されることから、日本・ハンガリー両国の経済交流及び人的交流が一層促進されることが期待されます。

◎外国に派遣される日本人及び外国から日本に派遣される外国人についての社会保障に係る問題とは

(1)二重加入

相手国に派遣され就労している人については、派遣中でも自国の年金制度に継続して加入している場合が多く、自国の公的年金制度と相手国の公的年金制度に対して二重に保険料を支払うことを余儀なくされていること。

(2)年金受給資格の問題

日本の公的年金制度に限らず、外国の公的年金制度についても老齢年金の受給資格のひとつとして一定期間の制度への加入を要求している場合がありますが、相手国に短期間派遣され、その期間だけ相手国の公的年金制度に加入したとしても老齢年金の受給資格要件としての一定の加入年数を満たすことができない場合が多いため、相手国で負担した保険料が掛け捨てになること。

これらの問題を解決するために、以下の2つを主な内容とした社会保障協定を締結しています。

(1)適用調整

相手国への派遣の期間が5年を超えない見込みの場合には、当該期間中は相手国の法令の適用を免除し自国の法令のみを適用し、5年を超える見込みの場合には、相手国の法令のみを適用する。

(2)保険期間の通算

両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を受給するために最低必要とされる期間以上であれば、それぞれの国の制度への加入期間に応じた年金がそれぞれの国の制度から受けられるようにする。

◎今後の予定

本協定の効力発生については、国会で承認を受ける必要があります。

(参考)

1.ハンガリーの在留邦人数は1,294名(平成23年10月1日現在)。

2.2013年8月現在、社会保障協定の発効状況は以下のとおりです。「保険料の二重負担防止」「年金加入期間の通算」は、日本とこれらの国の間のみで有効であることにご注意ください。

(注)イギリス、韓国及びイタリアについては、「保険料の二重負担防止」のみです。

社会保障協定発効済の相手国 ドイツ、英国、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス
社会保障協定署名済の相手国 イタリア(平成21年2月署名)

インド(平成24年11月署名)

ハンガリー(平成25年8月署名)

政府間交渉中の相手国 ルクセンブルク(平成22年5月から協議中)

スウェーデン(平成23年10月から協議中)

中国(平成23年10月から協議中)

予備協議中等の相手国 スロバキア(平成22年9月から協議中)

オーストリア(平成22年10月から協議中)

フィリピン(平成21年8月から協議中)

トルコ(平成24年2月から協議中)

フィンランド(平成24年10月から協議中)

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000015997.html