2012.12.13 (労務関連)改正高年齢者雇用安定法に関するQ&Aが公表されました

平成25年度から公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられることに対応し、雇用と年金の確実な接続等を図るため、平成24年の第180回通常国会において高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正(平成25年4月1日施行)が行われました。この程、法改正の趣旨等を踏まえ、当該改正法に係るQ&Aが公表されました。

■Q&Aの一部抜粋

厚生労働省から公表されたQ&Aは、「継続雇用制度の導入」、「就業規則の変更」、「継続雇用制度の対象者基準の経過措置」、「経過措置により労使協定で定める基準の内容」および「継続雇用先の範囲の拡大」の大きく5つに区分して構成されています。以下、その一部を抜粋してご紹介いたします。

◎継続雇用制度導入について

質問 継続雇用制度について、定年退職者を継続雇用するにあたり、いわゆる嘱託やパートなど、従来の労働条件を変更する形で雇用することは可能ですか。その場合、1年ごとに雇用契約を更新する形態でもいいのでしょうか。
回答 継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。

1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当ではないと考えられます。

したがって、この場合は、

(1)65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと

(2)65歳までは、原則として契約が更新されること(ただし、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められます。) が必要であると考えられますが、個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。

就業規則の変更について

質問 当社の就業規則では、これまで、基準に該当する者を60歳の定年後に継続雇用する旨を定めていますが、経過措置により基準を利用する場合でも、就業規則を変えなければいけませんか。
回答 改正高年齢者雇用安定法では、経過措置として、継続雇用制度の対象者を限定する基準を年金支給開始年齢以上の者について定めることが認められています。したがって、60歳の者は基準を利用する対象とされておらず、基準の対象年齢は3年毎に1歳ずつ引き上げられますので、基準の対象年齢を明確にするため、就業規則の変更が必要になります。

【希望者全員を65歳まで継続雇用する場合の例】

第●条

従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については、65歳まで継続雇用する。

【経過措置を利用する場合の例】

第●条

従業員の定年は満60歳とし、60歳に達した年度の末日をもって退職とする。ただし、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者であって、高年齢者雇用安定法一部改正法附則第3項に基づきなお効力を有することとされる改正前の高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づく労使協定の定めるところにより、次の各号に掲げる基準(以下「基準」という。)のいずれにも該当する者については、65歳まで継続雇用し、基準のいずれかを満たさない者については、基準の適用年齢まで継続雇用する。

(1)引き続き勤務することを希望している者

(2)過去●年間の出勤率が●%以上の者

(3)直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと 等

2)

前項の場合において、次の表の左欄に掲げる期間における当該基準の適用については、同表の左欄に掲げる区分に応じ、それぞれ右欄に掲げる年齢以上の者を対象に行うものとする。

平成25年4月1日から平成28年3月31日まで→61歳

平成28年4月1日から平成31年3月31日まで→62歳

平成31年4月1日から平成34年3月31日まで→63歳

平成34年4月1日から平成37年3月31日まで→64歳

就業規則の変更について

質問 就業規則において、継続雇用しないことができる事由を、解雇事由又は退職事由の規定とは別に定めることができますか。
回答 法改正により、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止されたことから、定年時に継続雇用しない特別な事由を設けている場合は、高年齢者雇用安定法違反となります。ただし、就業規則の解雇事由又は退職事由と同じ内容を、継続雇用しない事由として、別に規定することは可能であり、例えば以下のような就業規則が考えられます。

なお、就業規則の解雇事由又は退職事由のうち、例えば試用期間中の解雇のように継続雇用しない事由になじまないものを除くことは差し支えありません。しかし、解雇事由又は退職事由と別の事由を追加することは、継続雇用しない特別な事由を設けることになるため、認められません。

就業規則の記載例】

(解雇)

第●条

従業員が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

(1) 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないとき。

(2) 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。

(3) ・・・

(定年後の再雇用)

第●条

定年後も引き続き雇用されることを希望する従業員については、65歳まで継続雇用する。ただし、以下の事由に該当する者についてはこの限りではない。

(1) 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないとき。

(2) 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。

(3) ・・・

◎継続雇用先の範囲の拡大

質問 継続雇用先の範囲をグループ会社にまで拡大する特例を利用するために、グループ会社との間でどのような契約を締結すればよいのですか。
回答 継続雇用先の範囲をグループ会社にまで拡大する特例を利用するためには、元の事業主と特殊関係事業主との間で「継続雇用制度の対象となる高年齢者を定年後に特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約」を締結することが要件とされており、特殊関係事業主は、この事業主間の契約に基づき、元の事業主の定年退職者を継続雇用することとなります。

事業主間の契約を締結する方式は自由ですが、紛争防止の観点から、書面によるものとすることが望ましいと考えられます。書面による場合、例えば、以下のような契約書が考えられます。

【継続雇用制度の特例措置に関する契約書(記載例)】

甲株式会社(以下「甲」という)と乙株式会社(以下「乙」という)、丙株式会社(以下「丙」という)及び丁株式会社(以下「丁」)といい、乙、丙、丁を総称して「関連会社」という)は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「高齢者雇用安定法」という。)第9条第2項に規定する契約として、次のとおり契約を締結する(以下「本契約」という)。

第1条

関連会社は、甲が高齢者雇用安定法第9条第1項第2号に基づきその雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するための措置として導入する継続雇用制度を実施するため、甲の継続雇用制度の対象となる労働者であってその定年後も雇用されることを希望する者(次条において「継続雇用希望者」という)を、その定年後に関連会社が引き続いて雇用する制度を導入するものとする。

第2条

関連会社は、甲が関連会社に継続雇用させることとした継続雇用希望者に対し、関連会社が継続雇用する主体となることが決定した後、当該者の定年後の雇用に係る労働契約の申込みを遅滞なく行うものとする。

第3条

第1条の規定に基づき乙、丙又は丁が雇用する労働者の労働条件は、乙、丙又は丁が就業規則等により定める労働条件によるものとする。

以上、本契約の成立の証として本書4通を作成し、甲、乙、丙、丁各自1通を保有する。

平成●●年●●月●●日

(甲)●●県●●市●●町●丁目●番●号

甲株式会社

代表取締役●●●● 印

(乙)●●県●●市●●町●丁目●番●号

乙株式会社

代表取締役●●●● 印

(丙)●●県●●市●●町●丁目●番●号

丙株式会社

代表取締役●●●● 印

(丁)●●県●●市●●町●丁目●番●号

丁株式会社

代表取締役●●●● 印

参照ホームページ[厚生労働省] http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/index.html