「中小企業における消費税の価格転嫁等に関する実態調査」結果

日本商工会議所が8月5日に発表した調査結果では、消費税率を引き上げる際に導入される軽減税率制度を巡り、企業の準備が遅れていることが明らかになりました。対応するレジへの改修について4割が着手していないことが判明しており、他の調査でも、軽減税率に未対応の企業が半数程度に上るというデータが公表されています。このまま10月に入れば現場の混乱は必至で、全国で同時多発的に混乱が生じる可能性が高まり、景気の足を引っ張る事態が懸念されています。
 
<調査概要>
・調査対象:各地商工会議所管内の会員企業
・回答事業者数:3,305件/3,771件(回収率87.6%)
・調査期間:2019年5月7日(火)~6月7日(金)
・調査方法:経営指導員等によるヒアリング調査
※各データは端数処理(四捨五入)の関係で、合計値が100%とならない場合がある。

【調査結果のポイント】
1.消費税率引上げ後の価格転嫁・価格設定について
・約7割の事業者が「転嫁できる」見込み。前回(2018年7月)調査時と比較すると、「転嫁できる」と見込む事業者の割合が4.3ポイント向上。
・売上高別では、BtoB事業者はいずれも7割超が「転嫁できる」としているものの、BtoC事業者では「1千万円以下の事業者」で約6割と、小規模な事業者は価格転嫁が難しい傾向。
 

2.軽減税率制度について
・「自社商品が軽減税率に該当するかの確認」について対応済み/対応中と回答した事業者(軽減税率対策に着手している事業者)は約8割を占めている。(図2-1)
・軽減税率対象品目を扱う事業者における「請求書・領収書等の区分記載対応(BtoB事業者)」、「レジの複数税率対応(BtoC事業者)」については、対応済み/対応中と回答した事業者は、いずれも約6割を占めている(図2-2、2-3)。うち、売上高別で見ると、小規模な事業者ほど「未着手」の割合が増加。売上高5千万円以下の事業者では、4割超が「未着手」となっている(図2-4、2-5)。
(※)「未着手」には、軽減税率対策が必要ない事業者(店内飲食のみでテイクアウトを実施していない等)が含まれているf:id:koyama-sharoushi:20190902183704p:plain
 出典:日本商工会議所「中小企業における消費税の価格転嫁等に関する実態調査」調査結果より】

【軽減税率制度への取り組みに未着手の事業者の声】・増税するかはっきりしてから対応予定(大阪府製造業)・昔からの税理士にすべて任せている(埼玉県飲食業)・現在、レジは使っていない。領収書等もすべて手書きで対応しており、今後もレジの導入予定はない(埼玉県飲食業)・店内飲食のみで、テイクアウトは実施していないので対応不要と考えている(群馬県飲食業)

3.軽減税率導入後の価格表示について
・軽減税率導入後の価格表示は、「総額表示」を選択する事業者が約15%減少。
・テイクアウト・イートインが発生するBtoC事業者においては「総額表示」、「外税表示」のいずれも多様な表示方法等が検討されている。
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 【出典:日本商工会議所「中小企業における消費税の価格転嫁等に関する実態調査」調査結果より】

4.経理事務負担の状況について
・「売上高1千万円以下の事業者(≒免税事業者)」では約3割が経理事務を「すべて社内で対応」しており、税理士等外部専門家の関与がない。
・「売上高1千万円以下の事業者(≒免税事業者)」では約半数が手書きで帳簿等を作成している一方、市販の業務用ソフトウェアも同程度普及している。
・「売上高1千万円以下の事業者(≒免税事業者)」では9割超、「売上高1億円超の事業者」でも約3割は経理事務に1人で従事。

5.インボイス制度および免税事業者について
インボイス制度は課税事業者の約5割、免税事業者の約6割が「知らない」と回答。課税事業者のうち、それぞれ約1割が「免税事業者との取引は(一切または一部)行わない」、「経過措置の間は取引を行う予定」と回答。免税事業者のうちそれぞれ約1割が「課税事業者になる予定はない」、「廃業を検討する」と回答。

インボイス制度とは>
インボイス制度とは税金計算のベースとなる証票制度です。正式名称は「適格請求書等保存方式」で、適格請求書等の保存を仕入税額控除の要件とする制度です。
インボイス方式」は、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式。
課税事業者は「インボイス」の発行が義務付けられており、また、自ら発行した「インボイス」の副本の保存が義務付けられている。
インボイス」に適用税率・税額の記載が義務付けられている。
免税事業者は「インボイス」を発行できない。したがって、免税事業者からの仕入れについて仕入税額控除ができない。
(注)「インボイス」とは、適用税率や税額など法定されている記載事項が記載された書類。欧州においては、免税事業者と区別するため、課税事業者に固有の番号を付与してその記載も義務付けているが、「インボイス」の様式まで特定されているものではない。



詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[ ○○ ]
"https://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2019/0805150000.html"