すべての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました

厚生労働省は、都道府県労働局に設置されているすべての地方最低賃金審議会が、今日までに答申した平成29年度の地域別最低賃金の改定額(以下「改定額」)を取りまとめました。これは、7月27日に厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が示した「平成29年度地域別最低賃金額改定の目安について」などを参考として、各地方最低賃金審議会で調査・審議した結果を取りまとめたものです。

【平成29年度地方最低賃金審議会の答申のポイント】
・改定額の全国加重平均額は848円(昨年度823円)
・全国加重平均額25円の引上げは、最低賃金額が時給のみで示されるようになった平成14年度以降、昨年度と並んで最大の引上げ
・最高額(東京都958円)に対する最低額(高知県等8県737円)の比率は、76.9%(昨年度は76.6%。なお、この比率は一昨年度から3年連続の改善) 

f:id:koyama-sharoushi:20170904094702j:plain

 

改定額の分布は737円(高知県佐賀県、宮崎県、沖縄県など8県)~958円(東京都)。時給800円以上の自治体が前年の9都府県から7割増の15都道府県にのぼっています。答申された改定額は、各都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する調査審議(関係労使からの異議申出があった場合に開催)手続きを経た上で、都道府県労働局長の決定により、9月30日から10月の中旬までに順次発効される予定です。

新しい最低賃金で最も高いのは引き続き「東京都」で、26円上昇の958円、次いで「神奈川県」の956円(26円上昇)、「大阪府」の909円(同)、「埼玉県」の871円(同)、「愛知県」の871円(同)、「千葉県」の868円(同)と続く。対して、最も低いのは「沖縄県」など8県の737円で、「宮崎県」と「沖縄県」はともに23円上昇、他の6県は22円上昇したものの、最高の東京都とは221円もの差があります。

最高額と最低額の比率は76.9%(昨年度76.6%)で3年連続の改善となっています。なお、厚労省中央最低賃金審議会は、経済状況などに応じて都道府県をA~Dの4ランクに分けて、26~22円の引上げ目安額を示していましたが、この国の目安を上回る引上げ額を答申したのは、「新潟県」(25円上昇の778円)、「鳥取県」(23円上昇の738円)、「宮崎県」と「沖縄県」(ともに23円上昇の737円)の4県で、いずれも目安を1円上回っています。

単純平均と加重平均の違い

単純平均
例えば、賃上げ額5,000円のA社と3,000円のB社があった場合、以下の計算式により単純に平均額を求めたものを「単純平均」と言います。
(5,000円+3,000円)÷2社=4,000円

加重平均
これに対し加重平均は、データのサンプル数(従業員数)によるウェイトを加味した平均となります。例えばA社の従業員数が100人、B社が10人とした場合、以下の計算式で加重平均を求めます。
(5,000円×100人+3,000円×10人)÷110人=4818.18円

このように従業員数に偏りがあればあるだけ、単純平均と加重平均の間に乖離が大きくなります。各種賃金統計では、従業員1人あたりの平均を求めることが基本となるため、加重平均が行われていることが通常です。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000174622.html

厚労省が是正勧告違法残業1万事業場超え

厚生労働省は、先月26日、平成28年4月から平成29年3月までに、長時間労働が疑われる事業場に対して実施した「労働基準監督署による監督指導の実施結果」を取りまとめ、公表しました。
前回の平成27年度の監督指導は、月100時間超の時間外・休日労働が疑われる事業場等を対象として実施されましたが、今回の監督指導は、月80時間超の時間外・休日労働が疑われる事業場等を対象として実施されました。そのこともあって、監督指導の数は大幅に増えた形になっています。

今回の監督指導の結果のポイントは、次のとおりです。
(1)監督指導の実施事業場:23,915事業場
このうち、15,790事業場(全体の66.0%)で労働基準関係法令違反あり。
(2)主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
①違法な時間外労働があったもの:10,272事業場(43.0%)
このうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの:7,890事業場(76.8%)
②賃金不払残業があったもの:1,478事業場(6.2%)
③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,355事業場(9.8%)
(3)主な健康障害防止に係る指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,515事業場(85.8%)
②労働時間の把握が不適正なため指導したもの:2,963事業場(12.4%)

また、今回の監督指導では、「2,963事業場に対して、労働時間の把握が不適正であるため、厚生労働省で定める『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』に適合するよう指導した」ということで、このガイドラインが重要視されていることが分かります。厚生労働省では、今後も監督指導の徹底をはじめ、長時間労働の是正に向けた取組みを積極的に行っていくとのことです。
※参考資料として、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」も紹介されています。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172536.html

スライド率等の改定に伴う労災保険年金額の変更について

「給付基礎日額の最低保障額」、「スライド率」及び「年金給付基礎日額の年齢階層別の最低・最高限度額」が改定されました。労災保険の給付は、被災した労働者が失った稼得能力を補填することを目的としたものです。したがって、被災した時点でその方がどの程度の所得であったかを基準として、給付の水準が決定されることとなります。

1スライド制について
(1)スライド制の趣旨
労災保険年金額については、原則として算定事由発生日(被災日)の賃金を基に算定した給付基礎日額に給付の種類等に応じた給付日数を乗じて算定されています。
しかしながら、年金は長期にわたって給付することになるため、被災時の賃金によって補償を続けていくとすると、その後の賃金水準の変動が反映されないこととなり、また、過去に被災した労働者と近年被災した労働者との補償水準が大きく異なってくる等、公平性を欠くこととなります。
このため、労災保険においては、給付基礎日額を賃金水準の変動に応じて改定する制度(スライド制)を取り入れています。スライドによる年金額の改定は、一般の労働者一人あたりの平均給与額の変動率を基準として、厚生労働大臣が定める改定率(スライド率)により、翌年度の8月1日以降に支給すべき年金給付について行われます。

(2)スライド率の算定方法
スライド率の算定は、算定事由発生日(被災日)の属する年度の平均給与額と、支給年度の前年度の平均給与額(平成29年8月1日からの1年間のスライド率であれば平成28年度の水準)を比較して計算されます。
したがって、平均給与額が前年度より上昇していれば年金額が増加しますが、下降していれば年金額も減少することになります。

(3)今回のスライド率の改定について
平成29年8月以降に適用されるスライド率は、現役労働者の平均給与額が上昇していることから、昨年(平成28年)と比べ、平均で0.14%増のプラス改定となっています。

2給付基礎日額の最低保障額(自動変更対象額)について
労災保険の給付は、被災された労働者の被災日以前3ヶ月間に支払われた賃金を基礎として計算される給付基礎日額を基に算定されることとなりますが、その額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるとき、例えば、最低保障額として定められた額(自動変更対象額)に満たない場合は、最低保障額を給付基礎日額とします。 ただし、スライド制が適用されることにより最低保障額を超えないときに限り、最低保障額をスライド率で除した額を給付基礎日額とすることとなります。 この給付基礎日額の最低保障額が、3,920円に改定されました(従前3,910円)。

3年金給付基礎日額の年齢階層別最低・最高限度額について
労災保険年金額は給付基礎日額を基に算定されますが、賃金水準が一般的に低い若年時に被災した労働者の年金額が生涯にわたって据え置かれた場合、壮年時に被災した者の年金額と比較すると大きな格差が生じることになります。
このような問題に対処するために、年金の給付基礎日額には、一般的労働者の年齢階層別の賃金構造の実態等に基づき、年齢階層別の最低限度額及び最高限度額が設けられています(本年8月1日以降適用される年金給付基礎日額の最低・最高限度額は表2のとおりです)。なお、昭和62年1月31日現在において労災年金を受けていた方で、給付基礎日額にスライド率を乗じた額が最高限度額を上回る場合には、給付基礎日額に昭和62年1月31日時点のスライド率を乗じて得た額を年金給付基礎日額とします。

労災保険年金額の改定について
上記1~3のとおり、労災年金に係るスライド率、給付基礎日額の最低保障額及び年金給付基礎日額の年齢階層別の最低・最高限度額が改定されたことによる変更後の給付基礎日額は、平成29年8月1日以降の年金額の算定に適用されますので、平成29年10月支払期から変更後の年金額が支払われることになります。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172107.html "

ふるさと納税、住民税の減収は約1.8倍の1767億円に

総務省が公表した「ふるさと納税に関する現況調査」では、平成29年度課税における減収額が前年度の約1.8倍にのぼることが明らかになりました。ふるさと納税は、自分の生まれた故郷だけでなく応援したいどの都道府県・市区町村に対する寄附でも対象に、寄附金のうち2千円を超える部分について、一定上限まで原則、所得税・個人住民税から全額が控除されます。その分、寄附者が多く住む自治体ほど減収額が大きくなります。

 調査は、昨年1月から12月までの間に行われたふるさと納税について、平成29年度課税で控除対象となる額や寄附者数をとりまとめたものです。 ふるさと納税の寄附額は前年度の1471億円から2540億4千万円へと約1.7倍に、控除額は同1001億9千万円から1766億6千万円へと約1.8倍に、寄附者数は同129万8700人から225万2800人へと約1.7倍になり、いずれも大きな伸びを示しています。

f:id:koyama-sharoushi:20170815164408j:plain

都道府県別にみると、「東京都」が断然です。東京都の住民の寄附者数は47万7908人でそのふるさと納税額(寄附金額)683億425万円に対し控除額は466億2052万円にのぼります。続いて「神奈川県」が寄附者数24万3091人でふるさと納税額258億8599万円、控除額は187億6121万円、「大阪府」が寄附者数19万9598人でふるさと納税額218億8798万円、控除額は150億7798万円と続いています。

このほか、「愛知県」(寄附者数16万2813人、寄附額180億7031万円、控除額128億4678万円)、「兵庫県」(同12万3052人、132億7886万円、94億1870万円)などが寄附者数・額で続いており、大都市部から地方部への税流出という傾向が裏付けられるものとなっています。都市部の住民が地方に寄附すると地方財政は潤いますが、一方で本来徴収できたはずの住民税が減る都市財政は苦しくなり不満が高まっているのが現状です。

なお、平成29年度分のふるさと納税ワンストップ特例制度の適用者は77万1800人(前年度41万8800人)、その寄附額は約471億円(同約242億円)、控除額は約449億円(約230億円)といずれも大きく伸びています。以前はふるさと納税で税金の控除を受けるためには確定申告が必要でしたが、27年4月からはワンストップ特例制度が導入され、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内等であれば、確定申告が不要となっています。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166799.html

ストレスチェック制度の実施状況 初めての公表

厚生労働省は、先月26日、全国の事業場から労働基準監督署に報告のあった、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について、その実施状況をはじめて取りまとめ、公表しました。

ストレスチェック制度とは、職場におけるメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的に、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対し、平成27年12月から年1回のストレスチェックとその結果に基づく面接指導などの実施を義務付けているものです。

ストレスチェック制度の実施が義務付けられている事業場については、実施結果を所轄の労働基準監督署に報告する義務もあり、その報告を取りまとめたのが、この実施状況です。

ストレスチェック制度の実施状況の概要〔平成29年6月末現在〕> ・ストレスチェック制度の実施義務対象事業場のうち、82.9%の事業場がストレスチェック制度を実施。
ストレスチェック実施事業場の労働者のうち、ストレスチェックを受けた労働者の割合は78.0%。
ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を受けた労働者の割合は0.6%。
ストレスチェックを実施した事業場のうち、78.3%の事業場が集団分析を実施。

f:id:koyama-sharoushi:20170815163430j:plain

ストレスチェックをきっかけに、働く方一人ひとりが自らのストレスの状況に気づきセルフケアなどの対処をするとともに、事業者は、長時間労働の改善や職場内のコミュニケーションのあり方などを含めた職場環境の見直しを行い、働きやすい職場づくりを進めることが重要です。

厚生労働省は、今後も、労働局・労働基準監督署において、ストレスチェック制度の実施徹底を指導するとともに、小規模事業場を含めたメンタルヘルス対策を推進するため、ポータルサイト「こころの耳」を通じた企業の取組事例の提供、産業保健総合支援センターによる教育・研修の実施、企業の取組に対する助成金といった各種支援事業の充実を図っていくとのことです。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172107.html "

労政審 労基法に基づく届出等の手続の簡素化のための要綱などを公表

厚生労働省は、今月12日に開催された「第137回労働政策審議会労働条件分科会」の資料を公表しました。
今回の議題は、
・「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について
・報告事項
などでした。

■電子申請率の向上が目的
今回要綱が示された労働基準法施行規則の一部改正は、行政手続の簡素化を図るためのものです。
現在、使用者が労働基準法に基づく届出等を、社会保険労務士の代行により電子申請する場合、使用者及び社会保険労務士双方の電子署名及び電子証明書が必要という取り扱いになっています。

しかし、労働基準法に基づく届出等の電子申請率は非常に低調です。(36協定:0.28%、就業規則:0.98%(平成27年))※国の行政機関が扱う申請・届出等の手続のオンライン利用率 47.3%(平成27年度)

この行政手続を簡素化し、使用者負担を軽減するため、委任状など、当該社労士が使用者の職務を代行する契約を結んでいることを証明する書面をもって、使用者の電子署名及び電子証明書を省略できるようにしようというものです。 この改正に合わせて、電子申請のためのマニュアルやリーフレットを作成・周知し、電子申請率の向上を図るとのことです。

■平成29年12月1日施行予定

■報告事項
報告事項については、時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金の実現に向けた法整備に関する確認的な資料が配布されています。その他、「民法改正に伴う消滅時効の見直し」、「厚生労働省の組織再編」などに関する資料が配布されており、今後、法改正などが必要となる事項などの確認・整理が行われています。

民法改正に伴う消滅時効の見直し」は、「民法の改正(公布の日〔本年6月2日〕から起算して3年を超えない範囲内で政令で定める日から施行)により民法消滅時効の規定が整理されることに伴い、当該規定の特例である労働基準法115条の賃金債権等に係る消滅時効についても、その在り方の検討を行う必要がある」というものです。



参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166799.html

労働時間評価の過労死ラインとは

「高速道路を管理運営する会社が、平成27年2月に自殺した男性社員に違法な長時間労働をさせていたとして、所轄の労働基準監督署が、同社と役員ら7人を労働基準法違反の疑いで書類送検していたことが遺族の代理人弁護士への取材でわかった。」という報道がありました(送検は6月23日付)。

代理人弁護士によれば、男性は平成26年10月、職場を異動し、経験がなかった道路補修工事の施工管理を担当。遺族側が勤務記録などを調べた結果、時間外労働は同12月までに毎月150時間以上に達していたそうです。夜間工事の監督業務のため、未明に退勤して8分後に出勤した記録もあったということです。

■過労死ラインとは?
このような、過労死に関するニュースが取り上げられることが増えましたが、過労死と労働時間の関係について一般的に次の条件を満たすと、過労死との関連性が強いとされます。

1ヶ月の残業時間(時間外労働)が100時間
もしくは2~6ヶ月の月平均残業時間が80時間


この時間を、「過労死ライン」とも言い、過労死の原因でもある、脳疾患・心疾患、または、精神障害を発症する可能性が高まるとされる基準があります。

これは、労災保険の業務災害の認定基準の一つである『脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準』における過重負荷の有無の判断の一つです。具体的には、次のように規定されています。

<労働時間の評価の目安>
疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、

1.発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

2.発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断する。 〈補足〉ここでいう時間外労働時間数は、1週間当たり40時間を超えて労働した時間数である。

上記の2.の部分が「過労死ライン」ということです。

なお、このラインを超えない場合でも、上記1.に書かれているとおり、「おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる」とされています。

業務の過重姓の具体的な評価に当たっては、疲労の蓄積の観点から、労働時間の他、

1:不規則な勤務
2:拘束時間の長い勤務
3:出張の多い業務
4:交代制勤務・深夜勤務
5:作業環境(温度環境・騒音・時差)
6:精神的緊張を伴う業務

の、負荷要因について十分に検討することとなっています。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166799.html