労働相談100万件超 昨年度の個別労働紛争の状況を公表

厚生労働省は、先月16日、「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。
「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度で、厚生労働省は、毎年度これらの制度の利用状況などを取りまとめ、公表しています。

■個別労働紛争解決制度とは
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく3つの紛争解決援助制度であり、次の3つの解決方法が提供されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
都道府県労働局長による助言・指導
・紛争調整委員会によるあっせん

都道府県労働局ではこれら3つの紛争解決援助制度をご用意しています。利用は無料です。 ○紛争解決援助制度のご利用は、労働者、事業主どちらからでも可能です。 ○制度に関するお問い合わせ、お申込みは総合労働相談コーナーでお受けしております。 ○労働者がこれらの制度を利用したことを理由として、事業主が労働者に対して不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。

平成28年度の状況のポイント
全国380ヵ所の総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は113万741件となっています(28年度から、これまで都道府県労働局雇用均等室で対応していた男女雇用機会均等法等に関する相談も計上)。 このうち、民事上の個別労働紛争に関するものは25万5460件です。 これを27年度と比べると、相談件数は9.3%の増加、民事上の個別労働紛争の相談件数は4.2%の増加となっています。 民事上の個別労働紛争の相談内容の内訳は、いじめ・嫌がらせに関するものが5年連続でトップとなり7万917件(全体の22.8%)、他では、自己都合退職に関するものが4万364件(同13.0%)、解雇に関するものが3万6760件(同11.8%)などとなっています。 また、同制度にかかる都道府県労働局長による助言・指導申出件数は8976件で前年度と比べ0.6%の増加、紛争調整委員会によるあっせん申請件数は5123件で同7.3%の増加となっている。 厚生労働省では、今回の施行状況を受けて、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導及びあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいくとのことです。


詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167727.html

時間外労働の上限規制等について

厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会は、平成29年6月5日、「第136回労働政策審議会(労働条件分科会)」を開催し、時間外労働の上限規制等について厚生労働大臣に対し建議を行いました。その資料が公表されています。 これは、平成29年3月に決定した「働き方改革実行計画」を踏まえて、平成29年4月から、同審議会の労働条件分科会において審議を重ねてきた結果を報告するものです。報告内容は、これまでの審議してきた内容を適当と認めるものとなっています。

◎この20年間の労働時間の状況
・一般労働者の年間総実労働時間が2000時間を上回る水準で推移している。
・雇用者のうち週労働時間60時間以上の者の割合は低下傾向にあるものの7.7%と平成32年時点の政労使目標である5%を上回っており、特に30歳代男性では14.7%となっている。
平成27年度の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は251件(うち死亡の決定件数は96件)、精神障害による労災支給決定件数は472件(うち未遂を含む自殺の決定件数は93件)となっている。

◎時間外労働の上限規制
・時間外労働の上限規制は、現行の時間外限度基準告示のとおり、労働基準法に規定する法定労働時間を超える時間に対して適用されるものとし、上限は原則として月45時間、かつ、年360時間とすることが適当である。

・上限に対する違反には、以下の特例の場合を除いて罰則を課すことが適当である。

・一年単位の変形労働時間制(3か月を超える期間を対象期間として定める場合に限る。以下同じ。)にあっては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することにより、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度の趣旨に鑑み、上限は原則として月42時間、かつ、年320時間とすることが適当である。

・上記を原則としつつ、特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年720時間と規定することが適当である。

・年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として、①休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で80時間以内 ②休日労働を含み、単月で100時間未満 ③原則である月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回までとすることが適当である。

◎勤務間インターバル
・労働時間等設定改善法第2条(事業主等の責務)を改正し、事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当である。

・労働者の健康確保の観点から、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」等を追加することが適当である。

◎健康確保措置
(1)医師による面接指導
長時間労働に対する健康確保措置として現行では、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり100時間を超えた者から申出があった場合に義務となっているが、この時間数を定めている省令を改正し、1か月当たり80時間超とすることが適当である。
(2)労働時間の客観的な把握
・すべての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定することが適当である。その際、客観的な方法その他適切な方法の具体的内容については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を参考に、通達において明確化することが適当である。


詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166799.html

平成29年10月1日から施行される改正育児・介護休業法について

平成29年10月1日から改正育児・介護休業法が施行されます。保育園などに入れない場合、2歳まで育児休業が取れるようになります。改正法でのポイントは3つです。最も重要となる「育休最長2年」の他、2つの努力義務が掲げられました。

(1) 育児休業の最長2年までの延長が可能になる
育児休業について、原則的な期間は「1歳まで」ですが、保育園等に入所できない等の事情がある場合には従来通り「1歳6ヵ月」までの延長、加えて「2歳」までの再延長が認められます。 また、育児休業期間の延長に合わせ、育児休業給付金の給付期間も延長されます。

(2) 出産予定の方やその配偶者に対し、育児休業関連の諸制度等を周知する
(努力義務)
本人、もしくは配偶者の妊娠・出産に際し、今後どのような制度を利用できるのか、休業中や休業後の待遇や労働条件がどうなるのかについての周知が、事業主の努力義務となります。

(3) 育児を目的とする休暇制度の導入を促進する
(努力義務)
未就学児を抱えて働く労働者の子育て支援として、育児のために使える休暇制度の創設が、事業主の努力義務となります。 これは、子の看護休暇や年次有給休暇等の既存の法定休暇とは別に与えられるものである必要があります。

なお育児・介護休業法についてはすでに今年1月より改正法が施行されています。具体的な改正ポイントは計8項目となっています。

(1) 介護休業は、対象家族一人につき「通算93日」を上限として「3回までの分割取得」が可能に
(2) 介護休暇は、「半日(所定労働時間の1/2)単位での取得が可能に
(3) 介護のための所定労働時間の短縮措置等は、「利用開始から3年」の間に「2回以上」の利用が可能に(介護休業の93日とは通算しない)
(4) 要介護状態の対象家族を介護する場合、「介護期間中の残業免除」を申請できる
(5) 有期雇用契約労働者の育児休業取得要件が緩和
(6) 子の看護休暇は、「半日(所定労働時間の1/2)単位での取得が可能に
(7) 育児休業等の対象となる子の範囲拡大
(8) 事業主に対し、上司や同僚、派遣先からのマタハラ・パタハラ防止措置を義務づけ


詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/

生産性を向上させた企業に対し、労働関係助成金を割増します!

今後労働力人口の減少が見込まれる中で経済成長を図っていくためには、個々の労働者が生み出す付加価値(生産性)を高めていくことが不可欠です。このため、企業における生産性向上の取組みを支援するため、生産性を向上させた企業が労働関係助成金(一部)を利用する場合、その助成額又は助成率を割増します。

■生産性要件
労働関係助成金は、助成金を申請する事業所が、次の方法で計算した「生産性要件」を満たしている場合に、助成の割増を行います。(具体的な助成額又は助成率は各助成金のパンフレット等をご覧下さい。)

助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、

・その3年前に比べて6%以上伸びていること。または、
・その3年前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること
(※)

(※)この場合、金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること
「事業性評価」とは、都道府県労働局が、助成金を申請する事業所の承諾を得た上で、事業の見立て(市場での成長性、競争優位性、事業特性及び経営資源・強み等)を与信取引等のある金融機関に照会させていただき、その回答を参考にして、割増支給の判断を行うものです。
なお、「与信取引」とは、金融機関から借入を受けている場合の他に、借入残高がなくとも、借入限度額(借入の際の設定上限金額)が設定されている場合等も該当します。


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なお、「生産性要件」の算定の対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないことが必要です。

■「生産性要件」の具体的な計算方法(一般企業)
生産性要件を算定するための「生産性要件算定シート」を厚生労働省のホームページに掲載しています。これをダウンロードし、該当する勘定科目の額を損益計算書や総勘定元帳の各項目から転記することにより生産性を算定できます。
ダウンロードはこちらから↓
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html

なお、助成金の支給申請に当たっては、各勘定科目の額の証拠書類(損益計算書、総勘定元帳など)の提出が必要となります。

■「生産性要件」が設定される助成金
労働関係助成金のうち生産性要件が設定される助成金は、雇用維持や障害者の雇用環境整備など一部の助成金を除いた以下の助成金が対象となります。

生産性要件の設定を設定している助成金は次のとおりです。(具体的な助成額又は助成率は各助成金のパンフレット等をご覧下さい。)

(再就職支援関係)
○労働移動支援助成金
早期雇入れ支援コース(※)、人材育成支援コース(※)、移籍人材育成支援コース(※)、中途採用拡大コース
(※)のコースは生産性要件が複数ある支給要件のひとつとなっています。

(雇入れ関係)
○地域雇用開発助成金
地域雇用開発コース

(雇用環境の整備関係)
○職場定着支援助成金
雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、保育労働者雇用管理制度助成コース、介護労働者雇用管理制度助成コース

○人事評価改善等助成金


○建設労働者確保育成助成金
認定訓練コース、技能実習コース、雇用管理制度助成コース、登録基幹技能者の処遇向上支援助成コース、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース、女性専用作業員施設設置助成コース

○65歳超雇用推進助成金
高年齢者雇用環境整備支援コース、高年齢者無期雇用転換コース

(仕事と家庭の両立関係)
○両立支援等助成金
事業所内保育施設コース、出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コース、再雇用者評価処遇コース、女性活躍加速化コース

(キャリアアップ・人材育成関係)
○キャリアアップ助成金
正社員化コース、人材育成コース、賃金規定等改定コース、諸手当制度共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コース

○人材開発支援助成金
特定訓練コース、一般訓練コース、キャリア形成支援制度導入コース、職業能力検定制度導入コース

最低賃金引き上げ関係)
○業務改善助成金



詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html

民間企業の障害者雇用率を段階的に引き上げ

厚生労働省労働政策審議会は、諮問を受けていた民間企業の障害者雇用率を2.3%(当分の間2.2%、3年を経過する日より前に2.3%、但し、現行は2.0%)とすることなどを盛り込んだ「障害者雇用率について(案)」について、「おおむね妥当」とした同審議会障害者雇用分科会の報告を了承し答申しました。

■障害者雇用率について(案)の諮問及び答申概要
民間企業の障害者雇用率の引き上げは、平成30年4月から、精神障害者の雇用が義務化され、障害者雇用率の算定式に精神障害者を追加することとなること等を踏まえたものです。今回の答申を受け、厚生労働省は、今後、この答申を踏まえた対応を行うとしています。

◎改正のポイント
(1)障害者雇用率について
・民間企業について、2.3%(当分の間2.2%、3年を経過する日より前に2.3%) ・国及び地方公共団体並びに特殊法人について、2.6%(当分の間2.5%、3年を経過する日より前に2.6%) ・都道府県等の教育委員会について、2.5%(当分の間2.4%、3年を経過する日より前に2.5%)

(2)施行期日
平成30年4月1日から施行

◎現行の障害者雇用率
<民間企業>
・一般の民間企業:法定雇用率⇒2.0%
特殊法人等:法定雇用率⇒2.3%

<国及び地方公共団体
・国、地方公共団体:法定雇用率⇒2.3%
都道府県等の教育委員会:法定雇用率⇒2.2% 
 
(2)特殊法人、国及び地方公共団体における障害者雇用率
一般の民間企業の障害者雇用率を下回らない率をもって定めることとされている。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
<http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166129.html




平成28年の男性の育休取得者割合が前年から0.51ポイント上昇

厚生労働省は、「平成28年度雇用均等基本調査(速報版)」の結果を取りまとめ、公表しています。「雇用均等基本調査」は、男女の雇用均等問題に関わる雇用管理の実態把握を目的に毎年実施されています。今回の速報版では、育児休業取得者割合に関する調査項目について取りまとめられています。なお、その他の項目を加えた確報版は、7月末ごろに発表される予定です。

平成28年度雇用均等基本調査(速報版)概要
◎調査の時期
平成28年10月1日現在の状況について、平成28年10月1日から10月31日までの間に実施

◎調査対象数
6,092事業所(有効回答数:4,213事業所、有効回答率:69.2%)

◎調査事項(事業所調査)
(1)育児休業制度の内容及び利用状況
(2)育児休業以外の育児参加のための事業所独自の休暇制度の内容及び利用状況
(3)介護休業制度に関する事項
(4)育児・介護休業取得中の労働条件等の取扱い
(5)育児のための所定労働時間の短縮措置等の状況
(6)育児や介護を行う労働者のための時間外労働・深夜業の制限の制度の内容
(7)短時間正社員制度の有無及び利用状況

育児休業取得者割合
(1)女性
平成26年10月1日から平成27年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、平成28年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は、81.8%と前回調査(平成27年度調査81.5%)より0.3 ポイント上昇。

(2)男性
平成26年10月1日から平成27年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、平成28年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は、3.16%で前回調査(同2.65%)より0.51ポイント上昇した。
詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-28.html




民法の一部を改正する法律案が成立

 

現行民法は、明治29(1894)年の制定以来、全般的な見直しが行われてきませんでした。この間、社会・経済が大きく変化し、取引形態も多様化・複雑化していることを踏まえ、数年間に及び民法の見直し作業が行われ、改正法案が第189回通常国会(平成27年)へ提出され継続審議されてきましたが、5月26日、第193回通常国会で可決成立しました。

■改正法の概要
◎定型約款について
定型約款とは、「定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。)において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいうものとすること」と規定され、今回の改正で初めて一定の要件のもとで法的拘束力が認められることとなりました。

消滅時効
(1)原則
消滅時効の期間が、現行法は大雑把に言えば民事10年、商事5年というようなイメージですが、改正法案では、
一 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅するものとすること。
1 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

二 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅するものとすること。
1 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
2 1に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。

現行法では、例えば、医師の診療費は3年で消滅時効にかかり(民法170条)、弁護士報酬は2年で消滅時効にかかる(民法)という規定がありますが、改正法案ではこれらの職業別短期消滅時効制度は一切廃止となりました。

(2)不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効については、基本的には現行法(20年間)どおりなのですが、改正法案では人の生命身体の侵害による損害賠償請求権については、より長い消滅時効期間(例えば、被害者が損害及び加害者を知った時から5年間)になっています。
特に、交通事故(人身事故)案件などについて適用されることになります。

(3)時効の完成猶予と更新
現行法では「時効の中断」という制度があり、時効の進行を止めて、振り出しに戻してしまうというものですが、「中断」という言葉が分かりにくいと言われてきたことから、改正法案では「時効の完成猶予」と「時効の更新」という表現が用いられています。

◎法定利率
法定利率について、現行法は、民事は年5%、商事は年6%となっています。改正法案では、一律に年3%に変更となっています(商法514条は削除)。しかも、3年ごとに1%刻みで見直すとなっていますので、変動利率となります。

また、交通事故の損害賠償などで被害者側の賠償額を減額する要素である中間利息控除の利率についても議論があり、改正法案では「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをするものとすること」とし、法定利率と同じ(年3%・変動制)になりました。利率が低い方が被害者有利となりますので、これが適用されれば今よりも賠償額が増えることになります。

債務不履行
中間試案では、「債務の本旨」という言葉を使うと債務不履行の態様を限定する趣旨だと誤読されるとして、あえて削除していたのですが、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができるものとすること。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでないものとすること」という形で規定されました。

◎危険負担
契約目的物が帰責性なしに滅失等した場合のリスクを誰が負担するかという問題である危険負担の問題については、現行法の規定が合理的ではないと批判が強かったことから、現行民法534条及び535条は削除されました。

ただし、危険負担に関する規定が消えたわけではなく、「売買」のパートにおいて「目的物の滅失又は損傷に関する危険の移転」という規定が定められています。そこでは、売主が買主に目的物を引き渡した時以後にその目的物が売主の帰責性なく滅失・損傷したときは、買主は契約の解除等をできないし、代金の支払いを拒むこともできない旨を規定しています。

なお、中間試案では、現行民法536条1項に該当する規定も削除となっていましたが、法曹界から矛盾点を指摘されたことから、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができるものとすること」と規定されました。

◎施行日
公布の日から3年以内の政令で定める日

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ[衆議院]
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/menu.htm